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【Vol.115】言葉にならない願いを、かたちに。「ここにいないともったいない」と思える住まいができるまで
リノベるは創業以来、ワンストップリノベーションサービス「リノベる。」を提供し、お客さま一人ひとりに寄り添いながら、8,000戸超の住まいづくりをサポートしてきました。そこで培われた知見や組織風土は、今、リノベーションプラットフォームを通じて、個人、法人、産業の課題を価値に変える様々な事業・サービスにつながっています。リノベるの価値の源泉とも言える「リノベる。」の住まいづくりを、お客さまと担当者、デザインパートナーと共にお伝えします。
お話を伺ったのは、「リノベる。」で中古マンションを購入・リノベーションし、入居から1年を迎えたきりとさん、ゆきさんご夫妻。住まい選びにおいて、途中で迷いや不安が生じるのはごく自然なこと。ご夫妻も、一度は物件購入の歩みを止め、数ヶ月を経て再びスタートを切りました。
おふたりは何に迷い、何に気づき、どのように自分たちの納得のいく住まいを見つけたのでしょうか。ご夫妻と、担当ライフスタイルコンサルタントの大橋賢人、設計パートナーの藤井雄一朗氏の4名で、これまでの歩みを振り返ります。
取材はオンラインにて行われた。上段はゆきさん、きりとさん、下段は、大橋、藤井氏
「憧れ」と「資産性」。ふたりの共通点を探ることから始まった住まいづくり
ー住まいづくりを考え始めたきっかけと、リノベるに足を運んでくださった経緯を教えてください。
きりとさん:最初は「少し話を聞いてみようかな」というフラットな気持ちだったんです。妻がInstagramでよく見ていたアカウントがあって、素敵な暮らしを発信されているその方が「リノベる。」で住まいづくりをされていたと知ったのが、直接のきっかけでした。いずれは家を買いたい、賃貸のままでは資産にならないという意識はありましたが、「築30年からの物件が狙い目」といった具体的な知識は、大橋さんたちに教わりました。
ゆきさん:ずっと賃貸暮らしで、夫婦の間でも「持ち家か賃貸か」で意見が分かれていたんです。私はSNSを見て、中古マンションを買ってリノベーションするという選択肢に強く惹かれていました。一般的なマンションの間取りはどれも似て見えましたが、リノベーションの自由度の高さに憧れて。それを伝えたところ、夫も興味を持ってくれました。
当時の住まいで困っていたことはなかったんです。ただ、どこか「お気に入り」ではない感覚があって。床の色のような細かいところも、気にはならないけれど変えようとまでは思わない。今の家に住んでみて、そのことをはっきり実感しています。

ゆきさん、きりとさんご夫妻。名古屋市在住。中古マンションを購入してリノベーションし、2025年8月に完成した。
ー大橋さんは、おふたりのご要望をどのように整理していったのでしょうか?
大橋:実は、ゆきさまがフォローされていたアカウントのお客さまを担当していたのが、私だったんです。不思議なご縁を感じましたね。
初回のご相談でお会いした際、きりとさまは「家賃がもったいない」といった資産形成やライフプランに、ゆきさまはカフェ巡りや一人の読書時間など、日々の暮らしに関心をお持ちだという印象を受けました。
一見すると異なるご要望ですが、「おふたりにとっての理想の暮らしとは何か」「共通している部分はどこか」という問いを持ってヒアリングを重ねました。その結果見えてきたのは、「将来の資産にしっかりつなげつつ、まだ言葉にはなっていない自分たちらしいライフスタイルを実現したい」という根底の思いでした。
ゆきさん:私自身、何を求めているのかが最初は分かっていませんでした。ただ「いいな」と思うことや気になることを口にしていただけなのですが、大橋さんがそこから私たちの「したい暮らし」を言葉にしてくださって。「これいいかも」と、心から納得できる形へと導いていただいた感覚があります。
対話を重ね、見えてきた『譲れないもの』
ー順調に進んでいた住まいづくりですが、1軒目の物件購入を一度見送る決断をされました。当時の葛藤を教えてください。
きりとさん:一番大きかったのは、僕の転職が決まったことです。住む場所が変わる可能性もあり、このまま進めていいのか迷いがありました。大橋さんと相談して一旦ストップさせていただいたんです。お断りを伝えるのは本当に申し訳なかったのですが、違和感を持ったまま進めるよりも、一度立ち止まって考えを整理したかったんです。
ゆきさん:物件自体は駅近で条件も良く、管理がしっかりしていれば築年数は問題ないというお話も聞いていました。大橋さんに素敵な内装も考えていただいて、納得して前向きに進めていたんです。ただ改めてふたりで話し合う中で、この先何十年と住み続けることも、将来売りに出す可能性も考えると、もう少し築年数の新しい物件で考えたほうがいいのかなと思うようになりました。
ー大橋さんはそのご決断をどのように受け止め、サポートされたのでしょうか?
大橋:転職という転機を控え、ご不安も大きかったはずです。まずはそのお気持ちをしっかりと受け止め、見送りに至った背景を丁寧に紐解いていきました。暮らしの見通しが変われば、住まいに求める条件が変わるのも自然なことです。次の物件選びに向けて、何を変え、何を残すべきか。「ペットを飼いたい」というご希望の優先順位も上がっていたので、ペット可の物件が多い、比較的築年数の新しい物件も視野に入れながら、無理のない予算に収まるバランスを一緒に探っていきました。
ーご決断から数ヶ月を経て、再びリノベるにご相談いただいたのですね。
きりとさん:はい。転職先での生活が安定する見通しが立ち、やはり家を持ちたいという思いが強くなりました。1軒目の物件選びを通じて、自分たちの「譲れない条件」が明確になったことも大きかったです。
ゆきさん:今後の資金計画も立てやすくなったので、見直した条件をお伝えして、もう一度マンション探しからお願いしました。再スタートするにあたって他の選択肢は考えなかったですね。「リノベるの大橋さんでしょ」と。
Beforeの室内。南向きに3か所の窓があり、日当たり抜群な空間。
ー再スタート後、大橋さんはどのように住まいづくりを進めていったのでしょうか?
大橋:再開のご連絡をいただいたときは、本当に嬉しかったです。転職もお金のことも、センシティブな話題です。正論を並べるのではなく、まずは何でも相談しやすい存在でいることを意識していました。
そのうえで感じていたのは、不安の大きな原因が「見えないこと」にあるということです。リノベーションは完成品を買うわけではないので、古いマンションがどんな空間になるのか、いくらかかるのかが分かりにくい。
だからこそ、暮らしとお金の両方を、目に見えるかたちにしていきました。暮らしはラフプランで描き、予算は物件を選ぶ前、選んだ後、内覧の後と、段階を踏んで確認を重ねる。その軸に置いたのが、「なぜこの家を買うのか」という目的です。目的に立ち返りながらすり合わせを重ね、おふたりがご自身の選択に自信を持てるようにしたかったんです。

大橋さんの当時のラフプラン。「光と空間が繋がる、穏やかな暮らし」をコンセプトに、物件探し、設計と住まいづくりを進めていく。
ー最終的に、今の物件のどこが決め手になったのでしょうか?
きりとさん:築年数と管理状態、そして日当たりと景色ですね。9階なので、眺めがすごく良いんです。
大橋:景色や日当たりは、もともと優先度の高い条件でした。それが実際に物件を見たことで、「これだ」という確信に変わったのだと思います。一言でいえば、「光と空間がつながる穏やかな暮らし」です。
きりとさまはカメラがお好きで、自然光の入り方を無意識のレベルで大切にされている。ゆきさまは夜勤のあるお仕事をされているので、自然光が体のリズムを整えてくれますし、お気に入りのカフェで光を浴びながら本を読むような時間にもつながります。間口が広く、光と風を取り込めるこの物件なら「シームレスリビング」が実現できる。おふたりが大切にしていることと、この物件で叶えられることが、ぴたりと重なったんです。
きりとさん:まさにその通りで、僕らより、僕らのことを理解していただいていると思います。(笑)
引っ越し後の室内。念願だったG-Planのアンティークダイニングテーブルと観葉植物に囲まれた空間に。
言葉の奥にある願いを、かたちにする設計
ー今の住まいで、特に気に入っているポイントを教えてください。
ゆきさん:大橋さんのラフプランをもとに、藤井さんがいくつか間取りを提案してくださったのですが、満場一致でひとつのプランに決まりました。特に惹かれたのが、寝室が一番奥に配置されていた点。休む場所が奥まったところにあることで心理的にも落ち着けて、今でも気に入っています。
藤井氏:実はそれが一押しのプランだったので、「狙い通り選んでくれたな」と、私自身もとても嬉しかったですね。(笑)
きりとさん:決まったときはドーンと盛り上がったんです。あの打ち合わせは本当に楽しかった。僕たちのしたい暮らしが分かった瞬間でした。あとは、アーチがやっぱりかわいいなと。
ゆきさん:そうですね。窓際のアーチも、通路のアーチもお気に入りです。玄関側の少し暗いところから、トンネルを抜けていくというコンセプトも好きで、アーチをくぐるたびに見える景色を楽しんでいます。それから、小下がりの一番端の壁際から、キッチン側を見る時間も好きです。木や躯体の色と、壁の白とのコントラストがきれいで、「いい眺めだな」と思いながら見ています。
間取りのビフォー・アフター。
ー藤井さんはプランを作る際、どのような設計の意図を持っていたのでしょうか?
藤井氏:もともとは「小上がりのようなヌックが欲しい」というご要望でした。ただお話を伺ううちに、本当に求めていらっしゃるのは「落ち着いて留まれる居場所」なのではないかと考えるようになったんです。そこで、住戸の形状や既存構造の制約を踏まえ、あえて床を“下げる”「小下がり」の空間をご提案しました。
寝室の配置とも関わっています。寝室には、廊下からではなくリビングからアクセスする。食事をする場所から一段下がってくつろぐ場所へ、そこから眠る場所へと、親密さや静けさが少しずつ深まっていく動線にしたいと考えました。ゆきさまは夜勤のあるお仕事だと伺っていたので、寝室がより奥まった落ち着ける場所になれば、という思いもありました。
小下がりは床をカーペット仕上げにすることで、工事費も抑えられます。大橋さんとも相談して、その分の予算を、きりとさまが憧れていたアーチに充てました。ひとつだけではなく、思い切って7つ。アーチが連続することで、空間に独特のリズムが生まれています。
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リビング、ワークスペース、パントリー、廊下で合計7か所のアーチを設えた。
ー小下がりの提案を聞いたとき、そして実際に住んでみて、いかがですか?
きりとさん:「小上がり」をお願いしていたので、図面を見て「そう来たか!」と驚きました。見事に反対でしたから。
ゆきさん:でも、実際に1年住んでみて、上げるのではなく下げる設計にして大正解だったと思っています。空間自体はシームレスにつながっているのですが、一段下がってカーペットの感触に触れるだけで、スイッチが切り替わるように安らげるんです。
今はビーズクッションのソファと、コーヒーを置ける小さなテーブルを置いて、本を読みながらコーヒーを飲んだり、カーペットの上でごろごろしたり。そういう落ち着いた時間を過ごすことが増えました。
小下がりはカーペット仕上げで、素足であるくのも気持ちが良い。日の当たるお気に入りの特等席だ。
「ここにいないともったいない」。暮らしの中で見つけたほんとうの答え
ー新しいお住まいで暮らし始めて、日々の過ごし方や気持ちに変化はありましたか?
きりとさん:僕は多趣味でいろいろなことをやるのですが、キッチンが広くなったことで、以前から好きだった料理がさらに楽しくなりました。SNSや動画で見つけたレシピを作り、ふたりで食べる時間がとても幸せだなと感じています。
ゆきさん:私は、特に冬の午前中が好きですね。日当たりが良くて、すごく暖かいんです。本当に気持ちが良くて、「ここにいないともったいない」と思ってしまう。どこかへ出かけるのももったいなくて、部屋の雰囲気や明るさを堪能しています。ほっとできるひとときが増え、家で過ごす時間も以前よりずっと長くなりました。
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ー担当チームと住まいづくりをしてみて、いかがでしたか?
きりとさん:大橋さん、藤井さんだったからこそ、実際に1年間住んでみて「本当にリノベるにお願いして良かったな」と心から思っています。僕たちがふわふわとした言葉で伝えた理想もすくい上げて形にしてくれる。そこに感動しました。
ゆきさん:私も同じ気持ちです。もともとよく出かけるタイプだったんです。でもきっと根底には「お気に入りの家で過ごす時間を充実させたい」という思いがあったんだなと、おふたりとの対話を通じて気づくことができました。言葉の奥にある思いを汲み取って、予算の中で、小下がりや奥まった寝室といった具体的な形に落とし込み、私たちにとっての理想の暮らしを「一緒に見つけてくださった」という感覚がすごくあります。
ー大橋さん、藤井さんは、今回の住まいづくりを振り返っていかがですか?
大橋:一度、購入を取りやめられたことは、私にとって大きな出来事でした。そのまま住まいづくりをやめてしまう方も少なくないんです。だから、再スタートのお声がけをいただけたことが本当に嬉しかった。同時に、なぜあのとき立ち止まられたのかを改めて考えたことが学びにもなりました。リノベるには「お客さまの理想に先回りする」というバリューがあります。理想だけでなく「不安」にも先回りして、具体的なアウトプットで解消していく姿勢をより強く意識するようになりました。
藤井さんのプランには、ちょっと嫉妬してしまうくらい刺激を受けました。私はどうしても平面で考えてしまうのですが、藤井さんは立体で考える。そのクリエイティビティは、すごく勉強になりました。
そして、先ほどの「冬はここにいないともったいない」というゆきさまの言葉。それを聞けたことが、一番の励みになります。
藤井氏:改めて感じたのは、お客さまの言葉を受け止めながら、その奥にある思いを理解することの大切さです。最近はSNSを見て「この仕上げにしたい」「この形にしたい」と具体的なご要望をいただくことが増えています。もちろん、それは重要な手がかりです。でも、それをただ取り入れるだけではなく、「なぜそれに惹かれたのか」「そこでどう過ごしたいのか」をお客さまの立ち位置で一緒に考える必要があると感じています。新築と違って制約の多いリノベーションだからこそ、こちらで解釈を決めつけるのではなく、提案し、対話を重ねて確かめ合っていく。その結果として、こんなにも愛着を持って住んでいただけていることは、設計者冥利に尽きます。
ゆきさん:ちょっと泣きそうです。たくさん考えてくださっていたのは分かっていたんですが、そんなところまで考えてくださっていたんだと、今、すごく感動しています。
ー最後に、おふたりにとって今回の住まいづくりはどのような経験になりましたか?
ゆきさん:自分が何を大切にしたいのかが分かった気がします。自分でも知らなかった自分を知れた、というか。実は家でゆっくりする時間を大切にしたかったんだ、家に愛着を持ちたかったんだ、と。最初は漠然と「かわいい家に住みたい」くらいで、何にこだわりたいのかは全然分かっていなかったと思います。今は家具を選ぶときも、何かを買うときも、いろいろ調べてこだわるようになりました。どうすれば心地よく、お気に入りに囲まれて過ごせるかを意識するようになったんです。
きりとさん:今の暮らしももちろん楽しいんですが、家づくりを通して、自分のやりたいことや、どう過ごしたいかがより明確になりました。今は観葉植物が少しずつ増えているので、もっと増やしたいですし、念願のわんちゃんも、もうすぐ家族に加わります。自分たちで見つけた暮らしが少しずつ形になっていくのを実感し、これからの毎日が本当に楽しみです。
迷いも含めて、ご夫妻が納得して選び取った住まい。その過程には、言葉の奥にある思いや不安にまで目を向けるライフスタイルコンサルタントと、課題を価値に変える設計パートナーが、ひとつのチームで伴走する姿がありました。
まるでお客さまの心の内側から見るように、言葉の表面に捉われず本質を考える。リノベるがバリューとして大切にしている「中から目線」は、こうした一つひとつの住まいづくりの中で磨かれてきました。この文化がリノベーションプラットフォームの価値を支えています。これからも、一人ひとりの「ほんとうの答え」に向き合いながら、リノベーションがスタンダードな選択肢となる未来をつくっていきます。





