【Vol.34】SIer、Amazon、スペスマを経てリノベるへ。LivingTech事業本部 斉藤晴久が挑む、キャリアの集大成

2019.02.21
このエントリーをはてなブックマークに追加
follow us in feedly

2018年、リノベるは第二創業期のスタートとも言うべきさまざまな変化を迎えました。「LivingTech事業本部」の発足もその一つ。この新設部門をリードするのが、新たにリノベるに参画した斉藤晴久です。斉藤は、アマゾンジャパンや、スペースマーケットにて手腕をふるってきた人物。その経験と知見をもとに、リノベるで何を成そうとしているのでしょうか。自らのキャリアを振り返るとともに、これからの展望を語ってもらいました。

斉藤晴久 Isa Saito
1979年生。SI在籍中に米国留学を経験し、2007年にアマゾンジャパンへ。日本におけるAmazon出品サービスの立ち上げメンバーとして参画し、サービスの普及・利用促進に貢献。その後、アマゾンメディアグループに異動し、Amazon.co.jpサイト内外の広告プロダクトマネジメントを担当。2015年に、創業間もないスペースマーケットに参画。ゼネラルマネージャーとしてビジネス全般のマネジメントに従事。2018年にリノベるへ。執行役員 LivingTech事業本部長。

“自社サービス”への思いが募り、黎明期のアマゾンジャパンへ

社内外で「元アマゾンの」とご紹介いただくことが多いのですが、キャリアのスタートはシステムインテグレータなんです。顧客へのパッケージシステム導入プロジェクトに携わるSE・ITコンサルタントとして5年ほど勤務していました。うち1年ほどは、会社の留学プログラムに参加する機会をいただきアメリカへ。20〜30カ国もの国からさまざまな人が集まっているプログラムで、彼らと同じ時間を過ごしたことは非常にいい経験になりました。

日本に戻り、次のチャレンジを考えるようになったときに自分のなかにあったのが、自社サービスに携わりたいという思い。SIerで顧客企業への導入を数多く経験するうちに、自分の会社のシステムやサービスで面白いことがしたいなと思うようになっていたんです。ちょうどそのとき、米国時代にチェックしていたAmazonが、日本で新たな事業を立ち上げると。そのスターティングメンバーを探しているということでたまたま声をかけていただき、「これこそやりたいことだ」とジョインすることにしました。

わずか数名で、日本版マーケットプレイスをローンチ

その新規事業というのが、「Amazon出品サービス」。Amazonマーケットプレイス上であらゆる事業者がモノを販売できるサービスを構築するというものです。私の入社した2007年当時のアマゾンジャパンは、仕組みも何も整ってはおらず、ほぼスタートアップに近い状態。マーケットプレイスの立ち上げメンバーも、私を含めてわずかな人数でのスタートでした。開発はすべてアメリカ本国でやっていたこともあって、文字通り昼夜を問わず、自由にがむしゃらにやっていましたね。

新しいものを立ち上げるのは想像以上に大変だったのですが、当時のメンバーとは今でも親交がありますし、やっぱり自分のなかではこのときの経験が「原点」になっているのかなと思います。まだ世の中にないものを作って、ローンチし、それが新聞に載ったときのあの嬉しさ。実際にそれが知られ、多くの人に活用されるようになっていく楽しさを味わうのは、仕事をする上で一番の醍醐味だなと。

起業準備中に出会ったスペースマーケットに心酔、新たな挑戦へ

その後、出品事業者向けのコンサルティング部門をつくったり、広告事業のプロダクトマネージャーを務めたりと、アマゾンジャパンには8年ほど在籍しました。入社当時からは想像もできないほど仕組みも組織体制も整い、いわゆる“会社”になってきて。自分のなかでも、新たなチャレンジを求める気持ちが強まってきていました。

実は、当初は起業を考えていたんです。自分が革製品をつくってもらおうと職人さんや工房を必死になって探したときの経験から、クラフト作品をオーダーメイドできるマーケットプレイスを構想していました。それで起業家が集まる場にもちょくちょく顔を出していたのですが、そこでスペースマーケットを立ち上げたばかりの重松さん(スペースマーケット社CEO 重松大輔氏)と出会ったことが、人生を変えました(笑)。

スペースマーケットは、いわば空間のマーケットプレイスです。さまざまな場所、さまざまな土地に眠っている空間に新たな利用価値を見出し、今まで出会えていなかった多くの人に届けていく。地方創生や地域貢献につながるビジネスだと直感し、自分から重松さんに「手伝わせてほしい」と申し出たんです。アマゾン時代、全国の出品事業者をまわってよく地方に出張していたのですが、そのときにおぼろげに感じていた、古民家など地域資産の利活用の可能性とリンクしたのが大きかったと思います。

気づかれていない価値を“見える化”するマーケットプレイス

古民家をはじめ不動産の持ち主の皆さんは決まって、「こんなの何にも使えないよ」と仰るんですよね。私の妻の実家も築100年超の古民家で、私なんかはその丁寧な作りと時間を経た空間ならではの味わいに感動するんですが、そこに暮らす両親にはそれが当たり前すぎる現実があります。

そうした固定観念を取り払い、スペースマーケットに掲載することで、空間の新たな価値が引き出された事例を数多く見てきました。例えば、銀座にあるビルの2Fの賃貸物件が、スペースマーケットで時間貸しをするようになり、ハイブランドがこぞってポップアップを企画するスペースになったり。阿佐ヶ谷の古民家が、コスプレ撮影の大人気スポットになったり。意欲ある地方自治体とご一緒し、地方に眠ったさまざまな空間を掘り起こす取り組みも進めていました。

いわば、既存のモノに新たな価値を見出し、それを求める潜在的なニーズとマッチングさせる場づくりです。アマゾン時代のマーケットプレイスも含め、この「つなげる」ための仕掛けづくりが私は単純に好きなんだと思います。そしてそれが、資源のサスティナブルな循環や、地域振興といった社会貢献につながっていくのが嬉しいんです。この感覚は、今のリノベるでのチャレンジにもつながっているなと実感しています。

リノベる LivingTech事業が担う、日本の暮らしの再発明

実はリノベるとの関わりはわりと長く、スペースマーケット時代にもご縁があり、リノベるの目指す世界観については深く把握していました。私自身、自宅をリノベーションした経験もあり、「暮らしの豊かさ」をより深く追求できるビジネスに携わりたい思いは強かったのですが、それでも正直、リノベるが単純に住宅リノベーションの世界での事業拡大を志向する会社だったら入社はしていなかったでしょう。それ以上のポテンシャルを感じたことがリノベるへの参画を決めた理由であり、そのポテンシャルを、LivingTech事業を通じて現実のものにしていくことが、これからの私のチャレンジになると考えています。

LivingTech事業のミッションは2つ。テクノロジーの活用により、家づくりだけでなくお客様の暮らしがスタートした後もずっとつながり続けていく仕組みを実現すること。そして、その仕組みの上に、リノベる以外のさまざまな事業者が参画できる「場」をつくっていくこと。

その2つのミッションの実現に向けて考えていることとしては、まず1つに、リノベるのリノベーションサービスのデジタル化です。いま、一つの家づくりに対して多くの人の手が介在していますが、システムにより効率化できる部分と棲み分けることで、クリエイティビティが問われる仕事に集中できる環境を整えたいと考えています。

新規のシステム導入をリードすることはもちろん、すでにリリースしているお客様向けの進捗管理用アプリ「リノベる。App」や、施工管理アプリ「nekonote」といった各種サービスのプロダクトマネジメントも一つですね。各プロダクトには参画いただいているパートナー企業様があります。今後の強い連携を通じて、より良い顧客体験を提供していくことで、リノベーション業界自体を、より盛り上げていきたいと思っています。

加えて、スマートホーム領域でのサービス立ち上げも重要な一手です。先日リノベる。ショールーム4拠点で Amazon Echo シリーズ タッチ & トライ体験コーナーをスタートしましたが、こうした動きをより加速していきたい。今、世界中でさまざまスマートホームデバイスが続々と生まれてきています。リノベるがそのセレクトショップとしての機能を持ち、お客様により良いものを手軽に手にとっていただける場になるよう動いていきたいと考えています。

そしてもう少し大きな視点でいくと、日本においてLivingTechという概念を確立し、広げていく活動にも積極的に取り組んでいくつもりです。昨年より年1回の大規模カンファレンスをスタートしていますが、今後は業界団体の設立などにも着手する計画です。

都内4箇所のショールームにてAmazon Echo シリーズ タッチ & トライ体験コーナーをスタート

リノベるでの取り組みを、自身のキャリアの集大成に

ちょっと大げさかもしれませんが、こうして振り返ってみると、リノベるへの参画はある意味で必然だったのかなという気もしています。事業を効率化するためのシステム導入はまさに私がSIer時代に経験してきたことですし、さまざまな事業者・プレイヤーが参画できる場づくりは、アマゾンジャパン、スペースマーケットで取り組んできたマーケットプレイスの立ち上げそのものです。

リノベるを、どんな存在にしていきたいか。やはり住宅はもちろん、店舗やオフィス、さまざまな空間に関して「何か変えたい」という思いが生まれたときであったり、そこでの暮らしや時間をより楽しめるものにしたいというときに、第一想起される会社にしていきたいですね。Amazonのときもそうでした。Amazonでモノを買うことはもはや当たり前の選択肢になっていますが、私の在籍した当時は決してそんな存在ではありませんでした。それが、ひとつひとつサービスを立ち上げ、大きくし、ムーブメントを起こしていくことで状況が変わっていったんです。あの流れを、リノベるでもう一度……そんなイメージを描いています。

このエントリーをはてなブックマークに追加
follow us in feedly