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【Vol.33】リノベーションを本物の“文化”に。様々なリノベ事業を牽引してきた三浦隆博が語る、リノベる参画の真意
昨年、リノベるのリノベーション事業に大きな変化がありました。日本のリノベーション文化を切り開いてきた一人、三浦隆博が新たにジョインしたのです。代表の山下がリノベる創業期からお互い切磋琢磨してきた存在が、リノベるのリノベーション事業を率いることに。そんな三浦にこれまでのキャリアを振り返りつつ、リノベーション業界とリノベるのこれからについて語ってもらいました。
三浦隆博 Takahiro Miura
住友不動産販売にて新築マンションの販売に携わった後、2000年に株式会社都市デザインシステム(UDS)へ。数々のコーポラティブハウスに携わる。2008年より株式会社リビタに移り、プロジェクトマネジメント部とPRコミュニケーションデザイン部の責任者を兼任。2016年より一棟事業本部長に。そして2018年、リノベるへ。リノベーション事業本部長として、リノベーションサービス「リノベる。」を牽引している。
原点は、コーポラティブハウス
なぜ私がリノベーションに携わり続けているか。さかのぼると、コーポラティブハウスが原点なんです。コーポラティブハウス、ご存知でしょうか。まずそこに住みたいという方が集まって組合をつくり、その組合が施主となって設計者を選び、施工会社を選ぶ。そうすることで、自分たちのライフスタイルにあわせた自由設計の住まいを、よりかしこく作っていくという仕組みです。
ちょうど2000年前後だったでしょうか。湾岸エリアに大規模タワーマンションが建設され、いよいよ日本でもタワーの時代が本格化するぞというときに、私自身はそれとは逆の方向性に可能性を感じていました。タワーマンションでは住民同士のつながりは希薄化するだろうけれども、世の中にはその逆を求める方が絶対にいるだろうなと思ったんです。それに同一規格の部屋が何百と集まっているタワーマンションに注目が集まれば、逆に自分だけのオリジナリティのある家が欲しいという方も必ず顕在化してくるはずだと。それで、住民同士でマンションをつくっていくコーポラティブハウスに興味を持ち、その先駆者的な存在だったUDS(都市デザインシステム)に入社しました。
そこで8年ほど、コーポラティブハウスやコーポラティブヴィレッジ、自由設計の分譲マンションなんかもやりましたね。トータルで30件ほど手がけたんじゃないかな。
その当時は、私自身もコーポラティブに住んでいました。コーポラティブのコミュニティってすごいんですよ。うちの子が1歳のときに住み始めて、小学校にあがるころに別のマンションに引っ越したんですが、引っ越した先で子どもがエレベータに乗れなくなっちゃったんです。カルチャーショックで。コーポラティブだと、周囲には知り合いしかいないという環境なんですね。違う階のお宅に泊まりに行ったり、クリスマスプレゼントをもらったり。だから引越し先で周りに知らない人が住んでいることにびっくりしちゃったみたいで。それくらい、密なコミュニティが生まれるんです。
ワンストップリノベーションという発明
コーポラティブの経験から、やはり住まいにはモノとしての価値だけでなく、それを自ら作っていく家づくりのプロセス自体にも価値があると確信していました。しかし、コーポラティブはどうしても時間がかかってしまいます。平均でも2年くらい。加えてさまざまな思いを持った方々が集まって作っていくことになるので、調整やコミュニケーションの難しさもあります。
もっと合理的に、区分単位でその良さを得られる方法はないだろうか。そこで、「コーポラティブの“一戸版”をつくろう」という発想で作ったのが、コーディネイターがお客様と一緒に住まいづくりをする中古マンションリノベーションのワンストップサービスです。2008年にUDSからリビタに移ってすぐのことですね。
つまり、リノベーションのワンストップサービスの背景にあるのは、コーポラティブハウスのシステム。だからリビタでは、自社で設計も施工も受けず、あくまでコーディネート業務に徹する仕組みをとっていました。お客様のライフスタイルにあった設計者を選び、施工も複数の業者に相見積りをとって。
今でこそリノベるをはじめワンストップ会社も増えていますが、当時はワンストップサービスという概念自体、あまり存在していなかったと思います。会社も、ブルースタジオさんや、関西のアートアンドクラフトさんとかそれくらい。基本的には買取再販会社がメインで、当時はリノベるもまだありませんでしたしね。
リノベーション協議会にこめた思い
リビタでは、ワンストップサービスの立ち上げに加え、もともとリビタで手がけていた一棟まるごとリノベーションの事業部長と、さらにPRコミュニケーションの部長も兼任していました。
当時は、リノベーションといってもまだまだ認知されているとは言えない状況で。UDS時代に、いかにコーポラティブの認知を広げてファンになってもらうかといった観点から会員戦略に携わっていた経験があり、同じくリビタでもリノベーションを啓蒙して会員組織を活性化し、リビタのファンになっていただこうという取り組みをリードしていました。
その中で、島原万丈さん(現 LIFULL HOME’S 総研 所長)を中心に、リノベーションをより普及させるには業界団体を作って活動するのが効果的なのではと話が上がって。それで一年弱ほどの準備を経て立ち上げたのが、リノベーション住宅推進協議会(現 一般社団法人リノベーション協議会)です。私もリビタの担当として、実務レベルから設立に携わりました。協議会の事務局長をしていました。
協議会に関しては、リノベーションの認知・啓蒙、品質向上、事業環境整備という目的で活動しています。リノベーションを文化として根づかせるためには、まずは事業者同士が協力し、業界として認知啓蒙していくことが大前提。そもそもリノベーションに新規参入する会社も多く、そこで業界全体としてサービスの品質を上げていかない限り、認知を広げるどころか市場からマイナスのイメージを持たれてしまいかねません。だとすると、ノウハウを各社で囲っているよりもオープンにしたほうが、業界全体として底上げされるはず。そんな考えをもって立ち上げに携わり、運営にも関わらせていただきました。
そして、リノベるへ
そうした活動が少しずつ実を結び、ここ数年でリノベーションの認知は一気に上向いてきています。住宅にとどまらず、オフィスや店舗、街づくりも含めてさまざまなリノベーション事例が生まれ、WEB検索でも、新築マンションよりもリノベーションの検索ボリュームのほうが多くなってきました。何より、中古物件の取引数が新築を上回るようになっている。
まさに、中古住宅に対する考え方が大きく変わってきているのだと実感しています。従来のように新築が買えないから中古をということではなく、積極的に中古を選び、自分のライフスタイルにあった形にリノベーションする方が増えている。いよいよリノベーションが一般化のフェーズに迫りつつあるということで、リノベーションをより強い文化として育てていくための次のステップとして、よりスピード感をもって発展させていかなければいけないと考えるようになりました。
そこで私が最も重視すべきではと感じたのが「技術」です。設計の技術や施工の技術もそうですし、WEBやITといった新しいテクノロジーもそう。従来の技術を革新し、新しい技術をうまく活用することで、リノベーションをもっと普及させられるんじゃないか。世の中の暮らしをより良く変えていけるんじゃないか。そう考えたときに強く興味を持ったのが、自社に設計・施工の機能を持ち、かつテクノロジー活用に力を入れているリノベるでした。
今後リノベーションが当たり前のものとして世の中に定着するかどうかは、どれだけ品質を上げていけるか次第であり、効率化・合理化してどれだけコストを抑えていけるか次第です。設計と施工が一体となってさまざまな基準づくりを進めていくこと、細かな工夫の積み重ねでコストを下げていくこと、またアプリ等の新たなツールの活用によってお客様とのコミュニケーションのクオリティを高めていくこと。こうした課題への意識が強く、実際にチャレンジしやすい環境がリノベるにはあるなと。
そもそも同業他社の立場でリノベるを見ていた頃から、伸びしろは感じていました。それを現していたのは、施工件数です。「え、何でこんなにやれるの!?」と。住宅のなかにもいろいろなカテゴリーがある中で、リノベるがやっているのは、ほんの小さな領域だけなんですよね。マンションの請負リノベーションだけ。それで年間500件も施工しているなんて、外からみたら信じられませんでしたよ。しかも、仕組みや制度はそれほどきっちり整っているわけではないらしい(笑)。だったら、そこをもっと整えていけば、どこまで伸ばせるんだろうと思って。その期待というか、純粋なワクワクはありましたね。
時代は、リノベーション3.0へ
リノベるではまず一つ、宝石物件との出会いのシーンに手を加えていきます。選べる物件の数を増やすのはもちろん、物件の探し方といった観点でも、マッチングのアプリを提供したり、一般に出回っていない物件をデータベース化したりして、「リノベるだからこそ自分にあった物件を見つけられる」という状況を実現していきたいと考えています。
さらに言うならば、そもそもリノベーションがまだ珍しかった頃とは違い、今やもう「リノベーションすること」がお客様の目的であるとは限りません。むしろ自分らしい住まいをかしこく手に入れられるのであれば、新築であろうと再販・リノベ済みであろうと自由設計のオーダーリノベであろうと、どれでも構わないという方がよほどお客様のニーズに近いんです。であればこそ、「リノベーションしませんか?」ではなく、魅力的な宝石物件をきっかけにリノベるに興味をもっていただけるような取り組みにも着手していきたいと思っています。
それからリノベーションデザインに関しても、設計者とともにじっくりと住まいづくりをしたい人と、インテリア・内装の好みのイメージやプランを手間なく実現したいという人まで幅広くなってきています。設計においてもこれからは、テクノロジーの活用が一つの鍵になるでしょう。アプリ等によってお客様とのコミュニケーションを効率化し、より豊かにしていく中で、デザイン仕様等もある程度の統一化が進んでいくはずなので、それをさらに施工品質に落とし込んでいく。結果としてコストの圧縮にもつながり、お客様によりかしこく住まいを手に入れていただけるようにしていきたいと。一方、よりじっくり家づくりを楽しみたいというお客様に対しては、デザイナーの指名などより自由度の高いサービスを提供していくことも検討しています。
今、リノベーション業界は潮目です。ブルースタジオさん、アートアンドクラフトさんがリノベーション事業をスタートしたのが草創期だとしたら、協議会ができて、多くの事業者がリノベーション事業を行い発展期・拡大期に入りました。次は成熟期と呼ぶべきか、ここまで積み上がってきたものがこのままさらに成長していくのか否かという、大きなターニングポイントに差し掛かっている感覚が強くあります。長く見積もったとしても、ここ1〜2年の話ではないでしょうか。それだけ世の中が変化するスピードは速いです。
その中でリノベるを、ひいてはリノベーション業界全体をどう引き上げ、活性化していくか。私としても集大成となるチャレンジをしていきたいと思っています。