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【Vol.110】リノベーションで、まちの記憶を継承する。愛着を未来へつなぐ、大洗パークホテル再生プロジェクト
茨城県大洗町。都心から車で2時間の好アクセスにありながら、由緒ある神社や豊かな食文化、美しい海岸、水族館やSNS映えする絶景など、多彩な観光資源に恵まれたこの地で、1985年から「まちの迎賓館」として親しまれてきた「大洗パークホテル」が、2026年3月、リニューアルオープンを迎えました。
プレスリリース:地域リゾートホテルを再生「大洗パークホテル」竣工・3月リニューアルオープン
今回は、2026年2月27日に行われたリニューアルオープン記念レセプションの様子を取材し、関係者の話から地域資産の継承と価値最大化に挑んだプロジェクトの舞台裏を紐解きます。
地域の歴史と記憶への敬意
大洗パークホテルは地域の方々にとってどのような存在だったのでしょうか。大洗町の國井豊町長は、町の人々の記憶に刻まれた重みを、自身の思い出と共に振り返ります。
「今年で還暦を迎える私にとって大洗パークホテルは『異次元の世界』。オープンから間もない1980~90年代、ここは県内でも有数の品格を誇るホテルでした。日本中のゴルファー垂涎の地「大洗ゴルフ倶楽部」に隣接し、パワースポットとして知られる大洗磯前神社といった周辺環境、ホテルの重厚な佇まいが相まって、ある種の『憧れの場』だったんです。茨城県内でも最大級の大広間は、数多くの結婚式や企業の創業記念等、数えきれないぐらいの歴史の表舞台となってきました。また、クリントン元大統領をはじめ多くの著名人や皇族の方々を迎えてきた、県内でも稀有な格式高い場所でもあります。茨城県で大統領経験者が宿泊したホテルはおそらくここだけでしょう。それだけに、老朽化が進むホテルの行く末には、町として大きな関心を寄せていました。」(國井町長)

かつての「憧れの象徴」だった大洗パークホテルは、歳月の経過とともに老朽化という課題を抱えるようになっていました。一方で、地域の方々にとっては今なお人生の節目を過ごした色褪せない思い出の舞台です。今回のプロジェクトは、こうした地域の愛着を基盤に、人が集まる魅力を再構築すべくスタートしました。
地域との信頼構築と大洗の本質的な魅力
しかし当初、國井町長の中には複雑な思いがあったと言います。
「『ファンドを通じた事業承継』と伺い、一過性の投資で終わるのではないかと懸念しておりました。しかし皆様と直接お会いし、大洗にしっかりと根を下ろし、共に発展を目指そうとする熱い思いに触れてすっかり意気投合しました。」(國井町長)
この信頼を得たのが、事業主体のPROSPERです。投資責任者である佐藤公春氏は、金融のプロフェッショナル。どのような視点でこのプロジェクトへの出資の決断に至ったのでしょうか。
「金融の世界の人間として、投資にあたっては数字の分析やマーケット調査などの理論武装をいたします。しかし、投資を決断したのはもっと違う理由でした。初めてここへ来た際、大洗磯前神社から見える太平洋の海の美しさ、食事の美味しさに感銘を受け、『ここには大きな可能性がある』と直感したんです。」(PROSPER 佐藤氏)

▲株式会社PROSPER 取締役 兼 株式会社PRS大洗 代表取締役社長 佐藤公春氏
この信頼を形にするため、PROSPER事業のプロジェクトマネージャーであるPlan・Do・Seeの三枝修史氏が大切にしていたことがあります。
「PROSPERが大切にしているのは、ホテルを我流に作り変えることではなく地域の声に耳を傾け、建物の歴史を尊び、そこにどのような期待が寄せられているのかを読み解くことです。大洗に幾度となく足を運び、深夜まで町長をはじめ多くの方々と対話を重ねる中で、見えてきたのは、このホテルが『人生の節目を彩る気品のある背景』であり『大切な賓客を迎える迎賓の場』であるということでした。
館内を歩いていた時、創業当時から飾られているアートが『航路図』や『羅針盤』であることに気付きました。創業者はこのホテルを、単なるビーチリゾートではなく、大海原を行く『豪華客船』に見立てていたのかもしれません。まるで豪華客船で旅をしているような、心躍る滞在体験とおもてなしをお届けしていきたいと考えています。」(三枝氏 Plan・Do・See)

名前を残し、愛着を継承する
ホテルの運営は、引き続きリロバケーションズが担います。ホテルで働く方々は大洗パークホテルに対してどのような想いを持っているのでしょうか。支配人の向鞠華氏は大きな決断をこう振り返ります。
「リニューアル計画を伺った際、『大洗パークホテルの名前を残しますか?』と問われ、正直に言えば非常に悩みました。新しいコンセプトに合わせて名称を刷新する選択肢もあったからです。しかし、私の背中を押したのは地域住民の皆様との思い出でした。地元の飲食店などで『大洗パークホテルで働いています』とお話しすると、『あそこで同窓会をしたんだよね』『友達の結婚式で行ったよ』と教えてくださる方が本当に多いんです。スタッフの中にも『ここで結婚式を挙げたから、ずっとお世話になりたい』という者がいます。町の人にこれほど愛されている施設を預けていただけている。その重みを改めて感じました。」(向支配人)

名前を残すことで、思い出を断絶させずに未来へつなぐ。地域の記憶を資産として捉える誠実な選択こそが、新生・大洗パークホテルの何物にも代えがたい魅力の核となりました。
さらに、2018年より運営を担うリロバケーションズの田村佳克代表取締役は、完成したホテルを前に決意を語ります。
「ここまで変わるのかと深く感動いたしました。ホテルは産み落として終わりではなく、その後の運営で育てていくことが使命です。パートナーの皆様と力を合わせ、大洗町の発展に尽力いたします。」(田村氏 リロバケーションズ)

リニューアルコンセプトを支える設計思想
PROSPER様の投資決定後、設計・施工のパートナーとして参画したのがリノベるです。リノベるが提案したのは、単なる意匠の変更ではなく、訪れる人の「五感を刺激し、心を洗う場所」という体験の再設計。その場所が持つ物語や周辺環境を建物の魅力へ取り込もうとする発想を評価いただき、リノベーションがスタートします。リニューアルコンセプトには「Revival of Elegance~その風格はいつの時代にも麗しい~」を掲げてすすめていきました。
リノベーションの設計・施工を担ったリノベるの取締役・北川雅巳は、プロジェクトに込めた想いを次のように語りました。
「リノベるの役割は、皆様の強い思いを形にすることです。私たちはリノベーションを『これまで積み重ねてこられた時間を受け取り、これからの時間を再編集する仕事』だと捉えています。大洗町の歴史と共に歩んできたホテルの記憶をしっかり受け止め、今の時代に即した設備と魅力を設えていく。このバランスこそが最大のテーマでした。」(リノベる 北川)

リニューアルオープンはゴールではなく、新たな価値創出のスタート
「大洗パークホテル」は、事業主の「地域活性への志」、運営者の「現場の誇り」、そして地元の方々が繋いできた「地域の記憶」という、目に見えない想いをひとつに結びつけ、次の100年へと歩みだしました。
私たちがプラットフォーマーとして果たすべき役割は、「想い」を確かな「形」へと変換することにあります。日本各地でまちを想う方々と共に、その建物やまちへの愛着を糧に、新たな可能性を育んでいく。リノベーションだからこそ実現できる地域創生の姿を、これからも追求していきます。

▲2026年2月27日。関係者が一堂に会し、新たな幕開けを祝った。
〈編集後記〉
ホテル館内をご案内。継承と進化を体現するリノベーション
今回、担当デザイナーに館内を案内いただいた際、特に心に残った言葉があります。それは、「コストという現実的な制約の中で、いかに既存建築の魅力を引き出し、新しいデザインと融合させるか」。そこに向かい、徹底して工夫を凝らしたというお話でした。
単に新しくするのではなく、古きよきものとの調和を追求したデザインの見どころを詳しくご紹介します。
〇エントランス
出迎えるのは、創業当時のレンガ壁や木材、モールディング装飾を活かしたクラシカルな大空間です。時を経た木の質感やモールディングの美しさに、新しいものにはない魅力を感じました。空間に合わせて新調したというラウンジチェアは座り心地も良く、触れるとなめらかで心が落ち着きます。テーブルやカーペットなど肌に触れる部分の質感にこだわったそうです。

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共用部で特に印象に残ったのが「照明」です。壁に設えられた創業時からのブラケット照明をデザイナーが気に入り、新設する照明も、あえてそれらと似たデザインのものを探し出し、設置したといいます。既存の意匠に寄り添うような新しい照明を見つけ出したという話に、建物への深い愛を感じました。

〇レストランエリア
かつての大宴会場の一部とフロントは、シックなメインダイニングに生まれ変わりました。中に入るとシックな落ち着いた空間にテーブルランプやペンダントライトの明かりが印象的に連なります。
空間を緩やかに仕切るアーチ状のレースカーテンは、設計上の最重要ポイントの一つ。理想の佇まいを実現するため、プリーツの幅やテキスタイルの透け感、床への落ち方に至るまで、徹底して検証を重ねたそうです。このレースカーテンの背後にはドレープカーテンも設えられており、エリアを区切って会場をセッティングできるなど、運営効率とおもてなしを両立させる工夫が凝らされていました。
メニューは地産地消を軸に茨城県産の食材を使った料理を提供予定だそう。また、日常の中でホテルをお楽しみいただくため、アフタヌーンティーにも挑戦すると三枝氏は語っておりました。地域の方々に愛される「町に開かれたホテル」としての役割を果たします。


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〇湯上がりラウンジ
もともと畳敷きの小宴会場だった場所は、大浴場からの通り道にふさわしい「湯上がりラウンジ」へ。天井や丸窓、障子といった和の意匠はそのままに、床に藍色のカーペットを敷き、家具を選び抜くことで、驚くほど居心地の良いスペースへと変貌を遂げていました。


〇客室
客室も全室リノベーション。新設されたスイートルームには、プライベートサウナやジャグジーが備わっており、まさに極上のリラックス空間です。密かに感動したのが、浴室の壁のツートンカラーの切り替えが、窓から見える「水平線」とぴったり重なるように設計されていること。


スタンダードルームでは創業当時から愛用されてきたベッドフレームやサイドテーブルを活かしつつ、そこに新調した家具や什器を掛け合わせました。新品には出せない既存什器のクラシカルな佇まいが、クラシックホテルならではの趣をより一層深めています。
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「まちの新しい価値」を、一つずつ形に
レセプションは地域の方々や事業パートナーの皆様が集まり大盛会となりました。会場に用意された寄せ書きのフラッグの一角に、リノベる一同が記した言葉があります。
「まちの新しい価値になる。」
これは、ものづくりを担う会社としての、この場に込めた決意です。2026年秋には、隣の旧レストラン棟をリノベーションしたサーマルスパ施設も完成します。まさに今、解体工事の真っ最中。パートナーの皆様とさらなる素晴らしい景色を想像しながら、プロジェクトを推進しています。
これからもものづくりの立場から、この場所が秘める可能性を一つひとつ形にしていきます。
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◆PROSPER:https://www.prosper-jpn.com/
◆リロバケーションズ:https://relovacations.com/
◆リノベる 都市創造事業:https://renoveru.co.jp/citycreate/

