【Vol.111】まちと暮らしを、一歩先へ。東急不動産とリノベるが考える、これからの不動産の価値とは

2026.03.31
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  リノベるが構築するCREリノベーションプラットフォームでは、「まちの新しい価値になる」という事業ビジョンのもと、事業計画・設計・施工・運営までワンストップで行う「都市創造事業」を展開し、法人の不動産の利活用を多角的にサポートしています。
 中でも、現在5棟目のプロジェクトが進行している東急不動産の賃貸レジデンスブランド「コンフォリア」シリーズでは、これまで多くの先進的な取り組みに挑戦してきました。
 コンフォリアシリーズはリート(不動産投資信託)運用を前提としたプロジェクトでありながら、BELS認証の取得をはじめ、産学連携によるCO₂・廃棄物排出削減量の可視化、DBJ Green Building認証や「東京こどもすくすく住宅認定制度」のアドバンストモデルの取得など、プロジェクトごとに新たな価値を積み重ねています。

2025年12月より千葉大学とコミュニティ形成の共同研究がスタートした「コンフォリア墨田三丁目」のコミュニティ拠点「GardEN」にて、東急不動産の齊藤高大氏、リノベるの松本周、中西祐輔に、取り組みの背景と両社が考えるこれからの不動産価値について聞きました。

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▲取材は2025年10月に竣工した「コンフォリア墨田三丁目」の「GardEN」で実施。

環境経営の推進からリノベーションへ

―コンフォリアシリーズはどのようなブランドでしょうか?また、リノベーションや環境配慮などに注力してきたのはなぜでしょうか。

齊藤(東急不動産):コンフォリアは「くらしと環境を、一歩先へ。」をコンセプトにした賃貸レジデンスです。東京23区や大阪を中心に、都市居住者にちょうどよい上質な暮らしを提供する賃貸マンションブランドで、立地、安全性、使い勝手、デザインのバランスを重視し、リラックスして日々の暮らしを心地よく楽しむことを大切にしています。

コンフォリアシリーズはリート物件ですので、資産価値や運用効率が重要になります。中古物件を取得しリノベーションを施すことで空室率の低減や賃料向上が見込めるだけでなく、新規取得から賃料発生までの期間が短い点で事業の仕組みとしても高い優位性があります。また投資家が重視する脱炭素や持続可能な開発、サステナビリティなどの要請に応えられるなど、リノベーション案件において、さまざまな挑戦を重ねてきたことは投資家からも高く評価されています。

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東急不動産 首都圏住宅事業本部 投資アセット事業部 統括部長 齊藤高大氏。
これまで分譲住宅の計画推進、「ブランズ」ブランドの企画推進、住宅事業の戦略立案など、住宅事業に関する幅広い分野の業務に携わってきた。東急不動産 1999年入社。
 

―CRE活用に本格的に注力するようになった背景は何でしょうか。

齊藤(東急不動産):東急不動産ホールディングスでは「WE ARE GREEN」をスローガンに掲げ環境経営を推進しています。再生可能エネルギー事業に積極的に取り組むなど、ESG投資家(環境・社会・ガバナンスを考慮して投資先を選定)に対しても業界トップランナーとして先進的な取り組みを行ってきました。

住宅事業でも環境によい取り組みができないかと、賃貸でのリノベーションに取り組み始めました。その第一歩がリノベるさんと初めてご一緒した「コンフォリア高島平」です。

実際に取り組む中で、リノベーション物件では新しい取り組みにチャレンジがしやすいという面白さがありました。新築物件の延長では入居者への訴求力が不十分であると考え、ペットと人が共に快適に暮らすための住戸や共用部を充実させたり、3LDKをゆとりのある1LDKへ変更したりと、大胆な取り組みが実現できました。また、コロナ禍のニーズをとらえたテレワークブースや、入居者のコミュニティ活性化を目指しドッグランを設置しました。入居者からも地域住民からも高い評価をいただき、早期満室と安定稼働を実現しています。「コンフォリア高島平」が成功事例となり、この流れを今後も継続していく方針です。社内でも脱炭素や循環型社会に貢献するプロジェクトを積極的に後押ししてくれる環境があり、リノベーション案件に取り組みやすい面もありました。

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▲1棟目の「コンフォリア高島平」(撮影:黒岩翼写真事務所)
https://citycreate.renoveru.co.jp/works/posts/suov3zAr

お互いの「想い」を形にすることでできた挑戦

――東急不動産のビジョンを具現化する際、リノベるが重視した点は何でしょうか。

松本(リノベる):第一弾となった「コンフォリア高島平」では、東急不動産ホールディングス様のビジョンスローガンである「WE ARE GREEN」を指針とし、その実現のために何ができるかという点を重視しました。その過程で間伐材の利用や廃材活用、またBELS認証やDBJ Green Building認証の取得など、定量的、定性的に環境配慮型の住宅への再生をご決断いただきました。私たちの新しい挑戦を「やってみよう」と前向きに取り組んでくださる事業者様であったからこそ、共に未来を切り拓いていくことができたと考えております。

私たちは、単にコンテンツを提案するだけではありません。地域のニーズを踏まえた企画立案、最適なパートナーとの連携、そしてコミュニティの醸成を通じて、まちへ価値を還元する視点を大切にしています。コンフォリア高島平での経験で培った知見を統合し、2棟目以降も多様な試みをすることで進化を続けています。

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▲リノベる 都市創造本部 事業開発部 部長 松本周
不動産会社で営業から賃貸事業などに携わり、リビタで不動産の仕入れから事業計画立案、アクイジションなどリノベーションの事業開発を担当。2018年、リノベるに入社。
 

―企画に落とし込む際に難しさはありましたか。

松本(リノベる):企画提案においては、単一的な価値提供ではなく様々な価値を掛け合わせた提案を常に心がけています。ハード、ソフトの両面、また住まいに対する様々なニーズ、それらをかけ合わせた企画を実現したことがプロジェクトの成功に寄与できた大きな要因だと感じています。

―実現するうえで、やはりハード面も重要になりますね。

中西(リノベる):はい、その通りです。ハード面を整えることで、想いを具体的な形にしていくことができます。
設計で最も大切にしているのは「想いを形にする」ことです。「WE ARE GREEN」の実現に向けて、担当者の想いを丁寧に汲み取りながら、課題や価値をどのように設計に反映させるかを常に考えています。具体的には、企画の段階から松本が率いる事業開発部門とともに、ディスカッションを重ね、「どんな空間、モノ、コトがあれば、より豊かになるか」を追求しています。

例えば、この「コンフォリア墨田三丁目」では、子育て世帯向けに専有部をリノベーションし、共用部にはコミュニティ拠点「GardEN」を設けました。ここでは地域の方が運営する「すみっこSUN食堂」の「こども食堂」も開催されています。「GardEN」前にある広場では、植栽のまわりにベンチを配置しましたが、実際にこどもたちが広場で遊んだり、保護者同士が集まって雑談したりする姿が見られるそうです。その風景はとても印象的で、設計・企画に携わった者として、何よりも嬉しく感じています。

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▲「GardEN」前の広場で遊ぶこどもたち。ベンチに座って休む方も多い。
 

また、リノベーション工事では、解体して初めてわかることも少なくありません。想定外の事態が発生した際には、リスクやメリット・デメリットを整理し、コスト増が見込まれる場合は調整案を提示するなど、リノベるのこれまでの知見をもとに丁寧かつスピーディーに対応することを心がけています。

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▲リノベる 都市創造本部 都市創造部 副部長 中西祐輔
組織設計事務所の「IAO竹田設計」にて分譲マンションの設計・監理に従事。その後アトリエ系設計事務所「小堀哲夫建築設計事務所」にて12年間、多岐にわたる建物の設計・監理に携わる。2023年にリノベる入社。
 

齊藤(東急不動産):当初の計画通りにいかないリノベーションの大変さ・難しさについては、社内で担当者とよく話しています。費用もスケジュールも、実際に工事を始めてから判明することが多いと。ただ、経験豊富なリノベるさんと一緒に取り組んでいるので、的確な解決策を提案していただけます。そのおかげで、私たちもチャレンジングな企画に前向きに取り組めていますね。

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▲「コンフォリア墨田三丁目」では、シェアスペースにて、地域ボランティアと連携し、月1回の「こども食堂」を開催。
 

―リノベーションでチャレンジしたことが、別の形で発展した事例はありますか。

齊藤(東急不動産):「コンフォリア高島平」でペット共生住戸やドッグランを整備したところ、「これまでこんな設備のある住まいがなくて探していました」、「提供してくれてありがたい」といった声をいただきました。ペットと一緒に住むことを「許容してくれる」物件はあっても、積極的に「歓迎してくれる」物件はまだまだ少ないと実感しました。

その経験を活かし、ペットと快適に暮らせる環境づくりという観点から、新築物件でもペット共生のマンションを増やしているところです。コンフォリアシリーズの新築物件でも行っています。リノベーション物件で行った先駆的な取り組みが、新築物件にも生かされています。

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目に見えないバリューが物件の価値になる

―「コンフォリア墨田三丁目」ではコミュニティ形成まで踏み込みました。嬉しい出来事などはありましたか。

齊藤(東急不動産):週1回、千葉大学の方と共同でレタスの栽培活動を行っていますが、それを楽しみに入居者のお子さんが来てくれています。月1回開催するこども食堂は入居者や地域の方が参加され、毎回とてもにぎやかで和気あいあいとしており、一度座ってしまうとみんなつい長居してしまうそうです。地域の方々もこの活動に興味を持ち応援してくださっていて、近くの八百屋さんから野菜をご提供いただいたという話も聞きました。

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▲コミュニティ拠点「GardEN(ガーデン)」内には、レタスやハーブを育てる「街中植物工場」を設置。(撮影:黒岩翼写真事務所)
 
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▲栽培活動や交流イベントの空間設計・運営は千葉大学driが監修。ワークショップ型の栽培活動や、収穫期には「レタス会」を開催し、地域コミュニティ形成と食育に貢献。
 

―こうした繫がりを、どんな価値と捉えていますか。

齊藤(東急不動産):「コンフォリア高島平」ではドッグランで会話が生まれ、近くのトリミングサロンなどの情報を教え合っていたそうです。コミュニティがあることで新しい気づきや刺激を受け、それが快適で心地よい暮らしにつながっていくことが最も重要だと考えています。

コミュニティづくりには、今後も様々チャレンジしていきたいと思っています。「コンフォリア高島平」では住戸内での限定的なコミュニティでしたが、「コンフォリア墨田三丁目」ではまちとの交流接点となるコミュニティ拠点をつくりました。レタス栽培活動では、小さなお子様を2人連れたお母さんが来ると、地域住民の方が上の子と一緒に水やりをやってくれたり、話し相手になったりと、地域や社会に開かれた場所があることで、自然発生的につながりが生まれ、多様な発見や体験ができる。これが、コミュニティの魅力ではないでしょうか。

―付加価値づけにあたる試みですが、コストもかかるため、決断には勇気が必要ではないですか。

齊藤(東急不動産):そうですね。レタス栽培工場を設けてこども食堂を行う企画が、物件のバリューにどう結びつくのか、特に投資の意思決定を行う役員から問われました。こうした見える化しにくい価値については、社内で企画を通す際、苦労する部分です。

ただ成功体験を積み上げているので、担当者が熱意をもってそのメリットや、居住者からの評価や満足度を高められることなどを説明し、企画を通しています。

中西(リノベる):その価値はすぐには可視化されにくいものの、住民の満足度につながれば、さらには住まいの心地よさというコンフォリアのブランド自体の価値向上にもつながると思います。パートナーとして伴走させていただきながら、持続的にサステナビリティやサーキュラーエコノミーという観点で取り組めていることは、当社にとってもプラスになっています。

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―「コンフォリア高島平」はすでに売却されたと聞いています。投資家の評価はいかがですか。

齊藤(東急不動産):2棟目の「コンフォリア川口」と3棟目の「コンフォリア北葛西」も、コンフォリア・レジデンシャル投資法人へ3月に売却いたしました。リノベーション物件を取得する側の視点では、建物の遵法性や安全性が一番の懸念材料ですが、その点も考慮してリノベーションしていただいています。企画の質もしっかりしていて、リーシング(物件の稼働)面でも安定して入居が続いていることが実績として見えているため、安心して取得できるという評価をいただいています。

物件によっては購入前からリノベるさんに相談し、購入前検討のご意見をいただいています。リノベーションに要する費用を含め、物件の収支計画を検証するための材料を提供していただいています。

松本(リノベる):最終的に売却を想定すると、建物の遵法性や潜在的なリスクを初期に把握することが重要です。現地調査でエラーの有無を確認し、懸念点がある場合にはさらに踏み込んだ分析や調査を行っています。

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多様性の受け皿としての住まいが、まちの価値も高めていく

―これまでの先進的な取り組みから、今後不動産にはどんな価値が求められると思いますか。

齊藤(東急不動産):多様性をいかに受容できるかが重要だと考えています。多様性こそが、まちの楽しさや新しい変化を生む原動力になると考えるからです。例えば、大規模な再開発を進める渋谷では、スタートアップ企業や外国人居住者を呼び込んだり、中心部だけでなく周辺部においても、リノベーションで「そのまちになかった新たな要素」を補完する施設をつくっています。人種や国籍、世代を超えて誰もが楽しみ、訪れたいと思えるまちにしたいと考えています。

コンフォリアシリーズでは、脱炭素やDX、コミュニティ形成、子育てのしやすさ、ウェルビーイングといった多様な付加価値を実装していきます。こうした取り組みが快適で安全なまちづくりに寄与し、安心して暮らせる地域社会づくりに貢献できると考えています。

松本(リノベる):人が暮らしに求めるものは、究極的には「幸せ」や「豊かさ」という普遍的な価値に集約されると考えています。それは、働きやすい環境、様々な学びが得られる環境、また安心安全を求める人もいれば、人と人とのつながりを求める方もいるでしょう。 しかし、それらのニーズに応えるため、単にワークスペースやキッズスペースを設けるだけの空間はもはや世の中にあふれています。大切なのは、これらのニーズに対して多層的、多角的に応えていく視点です。

この「GardEN」を例に挙げれば、年齢の違うこどもたちや近所のシニアの方々、こども食堂のスタッフなど、日常では接点のない人々との交流があります。多世代の交流から得られる学びや共感は、先ほどの暮らしの豊かさにつながる価値となります。間接的には参加者の家族の時間も豊かになり、働きやすい環境や安心安全を感じることができる場所ともなります。将来的にここに関わる方々が主体となって運営を担っていく形こそが、理想的なコミュニティのあり方だと考えており、そうした本質的な価値を提供し続けることができる不動産は、自ずと高い事業性が伴っていくと確信しています。

中西(リノベる):設計の立場では、「居場所づくり」を強く意識しています。多様性を受け入れる器をつくることは、極めて重要な役割です。 
これまでも、住戸内のコミュニティ形成に注力した「コンフォリア高島平」、地域に開かれたポケットパークを設けた「コンフォリア川口」、そして共用部にインタラクティブなサインを導入し交流のきっかけを生み出した「コンフォリア北葛西」と、歩みを止めることなく取り組んできました。ここ「コンフォリア墨田三丁目」では、それらをさらに進化させ、地域の方々も利用できるコミュニティ拠点を構築するなど、先進的な居場所づくりを実現できたと自負しています。

関わる皆様の想いや知見を合わせることで、確かな相乗効果が生まれます。古い建物を壊すのではなく、時代のニーズに合わせて進化させていく。そうして「ストックを共に育てる」という視点を持つことが、結果として不動産の永続的な価値向上につながっていくのだと考えています。

コンフォリア北葛西
3棟目「コンフォリア北葛西」のインタラクティブデザイン(撮影:黒岩翼写真事務所)
https://citycreate.renoveru.co.jp/works/posts/0brb1TqI
 
コンフォリア川口
▲2棟目「コンフォリア川口」のポケットパーク(撮影:黒岩翼写真事務所)
https://citycreate.renoveru.co.jp/works/posts/VS7X07IM
 
 

・東急不動産の賃貸レジデンス「COMFORIA」シリーズ
https://www.tokyu-land.co.jp/residential/apartment/

・リノベる 都市創造事業
https://citycreate.renoveru.co.jp/

・「コンフォリア墨田三丁目」
https://citycreate.renoveru.co.jp/works/posts/kxZLmdfh

・すみっこSUN食堂 
HP:https://sumikko3.my.canva.site/sun
Instagram:https://www.instagram.com/sumikkosun_shokudo?igsh=NjZwbWtvcDEzYzB2

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