【Vol.114】築54年のオフィスをまちにひらく。東京建築祭2026で伝えた、みんなで「活かしつなぐ」想い

2026.09.18
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リノベるが展開するオウンドメディア「パズル」。今回は「東京建築祭2026」への参加について振り返ります。

東京建築祭は、「建築から、ひとを感じる、まちを知る。」を理念に掲げる大規模建築体験イベントです。東京の多様な建築を舞台に、特別公開やガイドツアー、トークイベントなどが展開され、普段は接することの少ない建築の奥深さに触れることができます。

リノベるは、東京建築祭に今年初参加しました。1971年竣工のビルをリノベーションした表参道本社オフィス「RENOVERU TOKYO OFFICE」を2日間にわたって特別公開し、ガイドツアー、アートエキシビション、ワークショップ、蚤の市など、さまざまな企画を展開しました。

一見すると異なるこれらの企画には、今ある価値を見つめ直し「活かしつなぐ」というメッセージを込めて企画されました。企画に携わった社員やパートナーの言葉とともに、当日の様子を振り返ります。

築54年のオフィスに見る、残すもの、変えるもの

オフィスでは来場者の方々に、楽しみながらリノベーションの考え方に触れていただくため、設計に込められた意図をクイズ形式で紹介しました。

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▲2026年5月22日(金)から24日(日)まで「東京建築祭2026」に参加。週末の2日間、表参道本社オフィスを特別公開した。(ⒸAyumi Sawa)

例えば、床に目を向けるとザラザラとした模様がついています。これは約54年前の竣工時、床材を貼るために塗った接着剤の刷毛跡です。通常であれば新しい仕上げで覆われる施工の跡をあえて残し、建物が重ねてきた時間や当時の造り手への敬意を表しています。

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壁や天井にも建物の記憶を見つけることができます。エントランスには壁を剥がした際に現れたレリーフを建物の顔として飾り、階段の踊り場には解体でむき出しになったコンクリート躯体をデザインのアクセントとして残しました。時を経た建築固有の美しさを、空間の味わいとして受け継いでいます。

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▲解体時に現れた構造や素材を、オフィスの随所にデザインとして残している。

一方で、古いものを残すことだけを大切にしたわけではありません。

オフィスには、自然光に合わせて明るさや色味が変わる照明を取り入れています。日中は明るく、夕方が近づくにつれて穏やかな光へ。人の生体リズムに配慮し、心地よく働けるよう計画されています。また、通路に面したデスクは歩く人と座る人の視線が自然に交わるよう、段差が設けられており、日常的な雑談やコミュニケーションが生まれやすい環境がつくられています。

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▲特別公開の様子。公式パンフレットを手に建築を巡る方や、ソファで休憩する姿も。(Ⓒ東京建築祭/Ayumi Sawa)
 
 

建物の歴史や記憶を尊重し、すべてを新しく造り替えるのではなく、今の働き方に合わせて活かしていく。既存建物をどのように読み解き、働く場として再編集するのか。このオフィスは、まさにリノベるの考え方を体現した空間です。

こうした想いは、会場に並んだほかの展示にも通じていました。

「好き」から始まる、長く愛せる住まい

住宅リノベーション事業の展示テーマは、「『好き』からはじまる暮らしが、最も身近なサステナビリティ」。

リノベーションと聞くと、古くなった部屋を新しくきれいに造り直すことを想像するかもしれません。しかし、リノベるの住まいづくりは、住む人自身の「好き」や「心地よい」を丁寧に掘り下げ、住まいのかたちにしていくプロセスです。そうしてつくられた住まいは、住む人にとって愛着のある場所になり、「これからも長く暮らしたい」という気持ちにつながっていきます。

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▲住む人の「好き」から生まれた住まいを、写真や動画で紹介。(Ⓒ東京建築祭)
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リノベるのYouTubeなどを通して、完成後のお住まいやそこでの暮らしを取材している、ホームソリューション本部セールスマーケティング課の砂川と北原に思いを聞きました。

―お客様の「好き」が詰まったお住まいを訪問して感じることはありますか?

砂川:完成後のお住まいを訪問すると、「ぼーっと見ているだけで癒される」と言っていただけることがあります。ドアノブや床材ひとつとっても自分たちで選んだ過程があるからこそ、何気ない時間にも愛着が湧くのだと思います。旅先で「これを家に飾りたい」と考えたり、季節の飾りを楽しんだり、家をただ住むためのハコではなく、共に時間を過ごす存在として育てていらっしゃるのが印象的です。

今回の展示では、完成直後と「暮らしが入った後」を見比べられるようにしました。家具や雑貨が加わることで、「作品」から「その人だけの居場所」へと馴染んでいく面白さを改めて感じました。

北原:お客様のお住まいを訪問する中で、「好き」を起点につくった住まいは、その後の暮らしにも大きな影響を与えていると感じます。お菓子作りが好きだった方が、その楽しさを深めてお店を開かれたり、お気に入りの空間でコーヒーを楽しむなど、日常の過ごし方そのものが変わっていくことがあります。

今回の展示を考える中で改めて感じたのは、リノベーションによって変わるのは住まいだけではなく、暮らしとの向き合い方でもあるということです。住まいが一人ひとりの「好き」を育み、その人らしい暮らしを支えるきっかけになっているのだと思います。

サステナビリティは、我慢や義務から始まるものではありません。「好きだから残したい」「心地よいから使い続けたい」という気持ちを持つことが、建物を長く大切にするきっかけにになります。そして、大切にされるから建物は長持ちする、よい循環は、「好き」から始まるということを展示を通して伝えました。

建物を読み解き、まちの価値へ

視点を、『個人の住まい』から『まち』へと広げてみます。

一棟リノベーションを手がける都市創造事業の展示エリア。ここでは、有効に活用されていないビルや建物に新たな役割を与え、「まちの新しい価値」へと再生させてきたプロジェクトの数々を紹介しました。

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▲都市創造事業のプロジェクトをパネル展示や動画で紹介。(Ⓒ東京建築祭)
 

 今回の建築祭で都市創造事業の展示リーダーを務めた都市創造本部デザインPM課の柳沢に思いを聞きました。

―「まちの新しい価値」をつくるために、どのような視点を大切にしていますか。

柳沢:私が目指す「まちの新しい価値になる建築」とは、単にきれいに直すことではなく、そのまちに「新しい日常の風景」を定着させることです。土地の歴史や人の営みを読み解き、地域の人々が主役になれる舞台をつくることで、これまで消費者だった人々が当事者としてまちに関わり始め、自立した文化や経済が芽生えると考えています。

例えば、錦糸町のオフィスビル改修プロジェクトでは、形式的な通過動線となっていた公開空地に、錦糸町の歴史を再解釈したグラフィックとストリートファニチャーを加えました。すると、子どもたちが遊び、お弁当を広げる人や、日向で読書をする人が現れ、想定を超えて空間が「まちの居場所」として動き始めました。

今回の展示を通して、建築とは完成して終わりではなく、「このまちをよくしたい」と願う人々の思いをかたちにし、動かしていくための道具なのだと再認識しました。ハードの先にある人の熱量こそが、まちの未来を育てていくと感じています。

DSC_4007▲床には錦糸町のオフィスビルのバリューアッププロジェクトでデザインしたグラフィックを再現。人が立ち止まるきっかけを生んだ。(Ⓒ東京建築祭、参考:JR西日本不動産開発とリノベる /築31年オフィスビル「JRWD錦糸町タワー」をバリューアップ
 

個人の住まいと、まちの中にある建物。対象は異なっても、すでにある価値に目を向け、長く愛されるものへつなぐ姿勢は共通しています。

また、会場では、「リノベーションを科学の視点で見つめてみよう」と題した展示も行いました。断熱・省エネルギー性能の向上やCO₂削減効果などリノベーションが持つ環境面の価値や、耐用年数や耐震性、資産性、改修コストなどリノベーションに纏わる疑問や不安を、客観的なデータとともに紹介するものです。

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▲連載マガジン『リノベを科学する』の記事紹介など、展示コーナーの様子。(Ⓒ東京建築祭)

 

建物の歴史や暮らしといった、数字に置き換えることが難しい価値。一方で、環境性能やCO₂削減効果のように、数字で明確に伝えられる価値。その両方を見ることで、既存建物を使い続ける意味が、より明確に見えてきます。

「捨てる」前に「活かす」可能性を探る

視点をさらに身近なものに移すと、建物以外の領域でも共通の思いが見えてきます。

地下1階の工房「b1./ビーワン。」では、「Pimlico Arts Japan」によるアップサイクルアートのエキシビションとランプづくりのワークショップを行いました。

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▲海洋プラスチックごみや廃材などを使った作品作りを通して、デジタル世界との親和性を探求する「Pimlico Arts Japan」によるエキシビションとワークショップの様子。(Ⓒ東京建築祭/Ayumi Sawa)

材料は、海洋プラスチックごみや、コロナ禍で使われていたアクリルパーテーションを活用した照明ボックスです。一度役割を終え、廃棄される対象になった素材も、その特徴や背景を捉え直すことで、新たな役割へつなげることができます。

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▲講師は「Pimlico Arts Japan」主宰のリサイクラー・さいとうとおる。完成した照明はそのままお持ち帰りできる。(Ⓒ東京建築祭)

―今回の企画への参加を決めた理由や、リノベーションとの共通点をどのように感じましたか。

さいとう(Pimlico Arts Japan):「Re」という言葉が、共通のキーワードとして今回のご縁をつないでくれたのだと思います。Pimlico Arts Japanでは、行動の指針に「Recycle」という言葉を置いています。規模は異なりますが、志は一緒だと感じています。

私はもともと古いものが好きで、リノベーションやレストアも大好きです。古いものに新しい価値を生み出し、ものが積み重ねてきた時間に価値を見いだす。そうした行為は、リノベるさんとも共通していると思います。

今回改めて建築廃材の魅力や可能性も感じました。これからは、廃材を土台に、建築的な美しさを取り入れた作品ができないかと考えています。

消費ではなく継承を前提としたモノとの出会い

エントランスでは、ヴィンテージ家具や古道具、オールドファブリックなどを扱う8店舗が集まり、「骨董通りの蚤の市」を開催しました。

かつて古美術店が軒を連ねたこの通りの歴史に思いを馳せながら、古いモノと新たな使い手が出会い、次の暮らしへと受け渡される場となることを目指しました。

また、オフィスの軒先をまちに開くことで、建築祭を目的に訪れた人だけでなく、骨董通りを行き交う方もふらりと立ち寄れる場となりました。

5025682C-5851-41DD-8C33-439AA2C14B61 ▲初日の夜にはナイトマーケットを開催。仕事終わりにフラッと立ち寄る方や、出店しているお店目当てに遠方から足を運ぶ人も。

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▲蚤の市の様子。コーヒーやチョコレートを楽しめるカフェスペースも用意。(ⒸAyumi Sawa)

蚤の市は2023年から始め、今年で4回目。初回から出店いただいている、『SANDS furniture』の金田さんに思いを伺いました。

―リノベるとともに蚤の市を開催することに、どのような可能性を感じていますか。

金田(SANDS furniture):リノベるさんから最初にお話をいただいたときに一番魅力を感じたのは、私が大切にしている「今あるものを大切にする」という考え方と、古い建物に新たな価値を与えるリノベーションの考え方が重なっていたことです。

時代を超えて残ってきた建物や家具、雑貨を改めて見つめ直し、その価値を次の世代へつないでいく。そのきっかけとなる場を、一緒につくることができたらと思い、参加しました。

蚤の市で印象的だったのは、単なる「売り買いの場」ではなく、人と人との会話が自然に生まれる場になっていたことです。「どこの国のものですか」「いつ頃のものですか」「どんなときに使われていたものですか」といった興味から会話が始まり、そのモノが持つストーリーや価値について、お客様と出店者、さらには出店者同士でも自然と会話が広がっていました。

回を重ねるごとに、「また来ちゃいました」と毎年足を運んでくださる方や、出店者同士のつながりも増え、一度きりのイベントではなく、少しずつ文化として育っているように感じます。これからも、古いものに新しい価値を見いだし、次の使い手へつなぐ場として、より多くの方に親しまれるイベントになればうれしいです。

背景を知ることで、日常の景色が少し変わる

260524-162 (ⒸAyumi Sawa)

2日間で1,000名以上の方にご来場いただいた本イベント。

来場いただいた方々からのアンケートでは、「コロナ禍を経ていかに働くかということを考えてオフィスをつくっていることがわかった」「古い良さやサステナブルな視点を生かしていて素晴らしかった」「解説を聞くと、違った視点から見える点がよかった」といった声が寄せられました。

背景を知ることで、見慣れた建物の景色は少し変わります。それは、来場者を案内した社員にとっても同じでした。日々働くオフィスへの感想を直接受け取り、自らの言葉で事業を説明する中で、この場所や仕事の価値を改めて捉え直す機会となりました。

既存建物を活用して環境負荷を抑えることは、リノベーションが持つ大切な価値です。同時に、建物やモノの背景を知り、愛着を持つことも、「これからも使い続けたい」という気持ちにつながります。心地よさや豊かさを感じられるからこそ、手を入れながら使い続ける循環が生まれる。リノベるは、そこにもサステナビリティの大切な側面があると考えています。

東京建築祭2026への参加は、来場者の方々にこうした考え方に触れていただく機会となっただけでなく、私たち自身にとっても、日々働く場所やリノベーションの価値を捉え直す時間になりました。今回の体験が、身近な建物や住まい、まちの風景、モノにある価値を、少し違う視点から見るきっかけになればと思います。

 

▼関連リンク
東京建築祭2026 公式サイト
https://2026.kenchikusai.tokyo

【東京建築祭2026】リノベるのオフィスでサステナビリティに触れる3日間
https://www.renoveru.jp/corporate/news/20260414

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