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【vol.48】スマートホーム時代にリノベデザイナーができること~CES 2020レポート~
毎年1月にアメリカで開催される、世界最大規模のテクノロジー・カンファレンス「CES(シーイーエス)」。今年1月7日〜10日に開催された「CES 2020」を視察すべく、リノベるのメンバーが現地に飛びました。そのうちの一人、ライフスタイルデザイナーの藏本恭之によるレポートをお届けします。
■プロフィール
藏本 恭之 Yasuyuki Kuramoto
リノベる株式会社 リノベーション本部 関西設計・施工部 デザイン1課所属
建築デザインへの目覚めは幼少期。日曜の朝に観た「渡辺篤史の建もの探訪」をきっかけに建築、特に住宅デザインに興味を持つようになり、小学生の頃から3Ⅾデザインソフトで理想の間取りづくりに没頭。大学院卒業後、設計事務所で新築戸建てや店舗の設計に従事する中で、住まい手とともに“暮らし”をつくる住宅リノベーションに強い関心を持つように。2013年リノベるに入社後、様々なお客様の暮らしのデザインに関わるとともに、国内外のデバイスを活用したスマートホーム・リノベーションのサービス立ち上げにも携わっている。
スマートデバイスと技術の最前線を体感すべくアメリカへ
かゆいところに手が届かない――。スマートホームのデザインに携わるなかで、常々感じるもどかしさです。スマートホームデバイスの中心地は、アメリカ。WEBを覗けば様々なデバイスの情報が見つかりますが、規格の違いなどが問題となり、日本で手に入るものはごくごくわずかです。「こうしたい」というイメージは明確にあるのに、理想的なデバイスを使うことができなかったことも、一度や二度ではありません。
「リノベる。」のショールームでも、可能な限りさまざまなデバイスを導入し、スマートホームを体感できるようになっていますが、技術が空間に溶け込んでいるというレベルにはまだまだ至っていないのが実情だと思います。
好みではないのに、便利だからという理由で置かざるを得ない。そんなモノに囲まれた空間では、決して気持ちのいい時間を過ごすことはできないでしょう。もっと住空間に馴染んでいくようなデバイスが必要です。今回のCESには、そうした条件を満たすデバイスや最前線のアイデアを、一つでも多くインプットしたいという思いで臨みました。
CES、スタートアップ視察で得られたインサイト
1 デバイス単体から、組み合わせの価値へ
渡米前に、スマートホーム分野の出展企業 約800社から60社程度をリストアップしブースを回りました。全体的に、プロダクトとしてのアイデアがより一層ブラッシュアップされているように感じました。例えばスマート照明は、商品・メーカーが増えてスペックも一定揃う中、各社デザインのバリエーションが増えており、デザイン面での差別化も始まっている様子が感じられました。会場ではデバイス単体ではなく、その組み合わせやコーディネートの重要性、暮らしにどのように実装していくかという点に多くの企業がフォーカスしていたことが印象的でした。
2 TOYOTA、SONY、Amazonの存在感
そんな中で、圧倒的な違いを感じたのがAmazonのAlexa。CESに出展していたプロダクトにもAlexaがビルトインされたものが非常に多く、まさに「あらゆるものにセンサとAlexaが入っている世界」が近づきつつあることを感じました。UXレベルで素晴らしい提案がなされており、たとえば洗剤の“箱”にセンサとAlexaが入っていて、洗剤の残りが一定量より少なくなったら勝手に注文してくれたり……。まさに、技術が空間と暮らしに溶け込んでいっているのを肌で実感しました。
圧倒的な違いという点では、日本でもニュースになっていたようですが、TOYOTAとSONYのプレゼンテーションには心を動かされました。富士山のふもとの広大な工場跡地に未来の実証都市をつくるというTOYOTAの“街づくり宣言”には「モビリティカンパニー」へのフルモデルチェンジ宣言をした同社の本気を感じましたし、SONYがまさかクルマを手がけるとは思ってもみないことでした。
従来の業種や事業領域というカテゴリは、もはや意味をなさなくなっています。リノベーションという手段も、もはや建物に限ったものではないのかもしれません。人が長い時間を過ごす空間という点で、クルマの中にもリノベーションデザインの手法が適応されるようになるかもしれないし、もっと広く「街」という観点でも同じことが言えるでしょう。リノベーションを限定的に考えるのではなく、まずは自分自身の考え方をアップデートし、領域横断的な視点で物事を考えられるようになる必要性を強く感じました。
3 技術を“活用する”という視点
業種の垣根を超えるというところで言うと、スマートホームとは少し毛色の異なる話になりますが、今回のCESにあわせて現地のスタートアップを訪問してきました。自分たちの仕事に活用できそうな技術を体感するとともに、ソフトウェアエンジニアの存在感を強く感じ、彼らとより一体化しながら、プロダクト推進できる環境づくりが必要だと感じました。
リノベーションデザイナーだからこそ、できることがある
すでに述べたとおり、リノベーションデザイナーそして住宅企業に大きな変化が問われるようになることは間違いなさそうです。それと同時に、リノベーションデザイナーとしての技術は、スマートホーム時代においても不可欠なものだという確信も持つことができました。その技術とは何か。表現するのは難しいのですが誤解を恐れず言うと、「その人にとって心地良い空間とはなにか?」からの逆算で細部までとことん考えて提案し、造り込むことのできる技術だと思います。
今回、100を超える数のスマートデバイスに触れてきましたが、例えばそのすべてに共通していたのが「電源」の問題。無線給電の技術などが一般化すればまた違ったアプローチも出てくるのでしょうが、現状、スマートデバイスは住宅内のコンセント位置の制約(コンセントが遠くてプラグが刺せない、など)を受けざるを得ません。
しかしそれは、設計の観点から解決することができます。あからじめデバイスの活用を想定した配線設計、プラグやケーブルが生活空間で主張しないよう収めるためのデザイン。あるいは、デバイスの足し引きに対応できるようユニット化するという発想もあるかもしれません。
リノベるでは実際にスマートホームを体験していただく場として、全国47ヶ所(2020年2月時点)にわたるショールームでスマートホーム化を進めているところです。希望されるお客様に対しては、スマートホームを前提とした設計提案を行っているほか、スマートホームデバイスの選定、設定代行や駆けつけサービスを行う「iTech Deliver for リノベる。」などのサポートをはじめています。今回のCES視察を通してショールームでのスマートホームの体験価値や、お客様のくらしの体験価値をもっと高めていくことができると確信しました。
住宅業界という垣根を超え、デバイスの開発者やソフトウェアエンジニアといった方々と一緒に、あたらしい時代における心地よい空間をつくっていく。そうした動きをもっと加速していかなければという思いが、帰国後どんどん大きくなってきています。そしてそれは、暮らしのプラットフォーマーとしてさまざまな企業や事業と一緒にサービス提供を続けてきたリノベるだからこそ、積極的に取り組んでいくべきことだと考えます。
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