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【vol.56】 リノベる新オフィス移転レポート①/これからの働き方、リアルなオフィスの価値を探る
コロナ状況下でリモートワークが一気に普及した2020年春。そして今、オフィスを縮小する企業や潜在空室率の上昇も顕在化し、これからオフィスはどうなるのか、世界中でこれからのオフィスの動向やあり方に関心が高まっています。
そんな中、リノベるはこの秋、本社オフィスの拡大移転を計画中。オフィス移転プロジェクトは、これからの働き方とリアルなオフィスの価値を考える過程でもありました。そのプロセスとは、どんなものだったのか――。
リノベるピープル&カルチャー本部 本部長の安河内 亮と、都市創造本部 本部長の西郷 俊彦、プロジェクトを担当する建築家の塩浦 政也氏(株式会社SCAPE 代表)との座談会形式でお届けします。
(撮影:白根美恵)
安河内 亮 Ryo Yasukochi
リノベる株式会社 執行役員/ピープル&カルチャー本部 本部長
西郷 俊彦 Toshihiko Saigo
リノベる株式会社 都市創造本部 本部長
塩浦 政也 Masaya Shioura
建築家/株式会社SCAPE 代表取締役社長
***
――はじめに皆さんの自己紹介を簡単にお願いします。
安河内
安河内です。リノべる側でオフィスプロジェクト全体のプロジェクトリーダーという位置付けでやっています。
西郷
リノベるの事業にはBtoC向けのマンションリノベーションと、BtoB向けの一棟リノベーションやオフィスのリノベーションがあるんですが、BtoB事業の担当をしている西郷と申します。
塩浦
株式会社SCAPEの塩浦です。これまで、オフィスやワークプレイスのリノベーションなど様々な空間を担当してきました。今回ご縁をいただいて、かなりハードルの高いプロジェクトを、なんとか皆さんに食いつきながらやっている状況です(笑)。
安河内
補足すると、塩浦さんに全体に関する設計のマネジメントをしてもらいながら、そのチームにリノベるのデザインチームも入って一緒にやっているという構図です。塩浦・西郷混合チームがあって、リノべる側の担当として私、という体制ですね。
組織の急成長でオフィスがあちこちに
――そもそもオフィス移転プロジェクトはどのように始まったのでしょうか。
安河内
会社の成長、事業の拡大に伴い、私が入社した1年半前と比べ、現在社員数が約70名近く増えています。
西郷
4~5年前、渋谷の本社ビルに移転してきた当初はワンフロアを借りていましたが、社員の増加に伴い2フロアになりました。それでも座席が足りなくなり、現在は近隣のビル含め、東京は3ヶ所にリノベるのオフィスが散らばっている状態です。
会社が大きくなるにつれて、社員が互いの仕事やお客様とのやりとりの様子を感じられるようにしたい、より一体感を高めたいという思いがあって。新たに拠点を増やすのではなく、ひとつのオフィスにいることの意味が自分たちの中で高まり、去年の夏から物件探しを始めました。
古さはむしろ僕らにとっては「価値」
安河内
物件を探す中で少しエリアを広げて探していたところ、たまたま縁があって今回移転するビルが見つかりました。古いビルなんですが、古さって僕らにとってみるとむしろいい。いわゆるインテリジェンスなビルに入るより、ちょっと古いビルの良さを生かしてうまくリノベーションするほうが、いろんなストーリーを伝えられるので。いいこと尽くしじゃん、と一気に決まりました。
――物件が見つかって、次の動きは?
安河内
西郷チームがお客さまのオフィス案件もやっていたので、自分たちでできなくもないんですが、西郷たちの案件がすごく増えているタイミングだったので、キャパ的に難しいなという心配がありました。それに加えて、リノベるブランドをしっかり表現した場にしたいなと考えていたので、一緒に取り組める人を選定してみようと二人で動き始めたんです。
――決め手となったのは?
安河内
僕らのやっていることへの「汲み取り力」みたいなことでしょうか。設計だけやります、じゃなくて、全体を見ていただける方を探していた。ブランディングといった側面まで考えてくれる人ってなかなか実際にはいなくて。
プロがクライアントである、という難しさとやりがい
――どんな点にやりがいを感じました?
塩浦
それまでは新しいオフィス、新築の超高層ビルなどを手がけることが多かったんですね。それはそれで社会的に意味がある仕事ですが、そればかりを追求しても都市が魅力的にならない。もっと豊かさみたいなものを追求したいと思ったんです。それで独立して自分の会社を作ったときに、「22世紀の景色を作る」というビジョンを掲げました。リノベるさんは同じ業界の仲間として、ある種のあこがれも持っていたのですごく嬉しかった。
――不安やプレッシャーもありましたか。
塩浦
クライアントがプロ中のプロであるというのは、難しいところだと思います。代表の山下さんはご自身で施工までやられます。なので全くごまかしが効かない。思想や考えの深さというところでごまかしが効かない、という意味です。もう一つの難しさは、これは山下さんがおっしゃっていましたが、リノベるは「まだ山の中腹にもさしかかっていない」、成長曲線が始まったばかりの企業です。そういう企業のここから先数年のワークプレイスをどう作るか。これは答えがない世界なので、ものすごくチャレンジです。
――リノベるの中では、どのように議論が進んでいきましか?
安河内
私や西郷、代表の山下がコンセプトワークに入らせてもらい、塩浦さんにファシリテートしてもらいました。塩浦さんの質問に答えていくうちに、今のオフィスの課題、これから先僕らがどういうことをやっていきたいのかが、徐々にまとまっていって整理することができた。あのワークはすごい良かったです。「どんなものを作りたいですか」って言われても、大きな意味ではなかなか僕らも整理ができていなかったので。
塩浦
やはりみなさんプロ中のプロだからこそ、プロなりのバイアスというか、概念をお持ちなんですね。そういった方に「どんなことでお困りですか?」と聞いてもプロの答えしか返ってこない。僕もプロの端くれなので、なるほどね、ってコンセンサスが取れてしまう。でもそれをやってしまうと、次のステージにいけないと思ったので、あえてド素人に戻ってもらった。写真をたくさんお見せしながら、この雰囲気がいいとか、ここに座ると気持ち良さそうとか、イメージの共有をするところから入りました。
コロナが起きてさらに議論が深まった
――そうしてプロジェクトを進行しているうちに、思いもかけないコロナの事態が起きたわけですが。
安河内
この状況下で、例えばオフィスを解約したり、2分の1にする会社も出てきている。それを僕らはこれから2倍強にするわけです。それをなぜやるのか。もう一度自分たちの中で深める必要がありました。
西郷
もともと分散していたものを集めることに、移転の大きな意味合いがありましたが、コロナでさらに議論が深まった印象です。住むこと、働くこと、僕らがテーマにしていることの原点に一旦立ち返って議論できたのは、いいきっかけでした。
安河内
ソーシャルディスタンスや、接触を減らすといった配慮をどこまで入れるのか。西郷たちがクライアントに対して行う今後のオフィス提案に不可欠となるであろう要素についての議論も追加で行われましたね。
西郷
いち早く自らのオフィスでトライし、ユーザーとして体験できるチャンス。この知見をクライアントのオフィス提案に活かしていけるのも楽しみです。
安河内
また、4月から6月まで、原則リモートワークを実践出来たのもよかった。リモート期間中、どんな業務にどれだけ工数をかけているかを計測したり、生産性を図ったり、いろんな検証をしていたんですが、リモートでできるじゃんということが結構あるということ、リモートじゃ難しいねということが、かなり整理されたのも良かったと感じています。もともとひとつのオフィスに集まることが大切で、コミュニケーションセンターとしてのオフィスというようなことは会話していたのですが、確信を持つことができました。
暮らしの中に仕事がある。自分なりの豊かさとは
塩浦
すごく俯瞰してみると、コロナ的な状況はもう予測されていたと僕は思っていて。180度変わってしまったわけではなく、2050年ぐらいに来るだろう都市の未来が急に来たと思ってます。
――もう少し具体的に教えていただいてもいいですか?
塩浦
例えば郊外に住んで、電車に乗って、会社に来て、仕事をして帰るっていう一般的なライフスタイルがありますよね。コロナ云々ではなく、リノベるはそれを壊そうとしてきた。新築や築浅の駅近物件を頂点として、都心の一番いい会社に通うみたいな、トップ同士を繋げる生き方ではなくて、どこにいても自分とフィットする案件であればそこにしっかり物語を作って、自分なりの豊かさを作れる。それがリノベるがやろうとしていることだと思うんです。「暮らしの中に仕事がある」というコンセプトが明確。
安河内
在宅が増えて、仕事場と住み処の境い目がどんどんなくなってきています。「今日は家」「今日はオフィス」みたいなことがあってもいいけど、理想は一日ずっと素敵な空間にいること。そうなったらとても素敵だなというのが、リノベるの社員みんなが思っていることだと思います。(後編へ続く)
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関連サイト
リノベる都市創造事業