【Vol.71】「リノベる。」DXの現在地。お客さまと現場のリアルな声に寄り添い、リノベーション特有の課題を価値に。

2022.07.19
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DXが遅れている業界として名前を挙げられることが多い建設業界・不動産業界ですが、リノベるはコロナ禍以前より、独自のプロダクト開発を進めています。リノベるの基幹事業である「中古マンション探しとリノベーションのワンストップサービス」は、不動産・建設・金融業界にまたがる長いバリューチェーンの中で、お客さまごとに最適なソリューション提供を行うサービスです。ユーザーにとっては理想的なサービスでありながら、その幅広い専門性と手間ひま、人材育成の難しさから、スケールが難しいビジネスと言われてきました。
「リノベる。」成長の要因の一つであり、今後の成長をけん引する「リノベる。」のDXについて、カスタマーエクスペリエンス本部プロダクトマネジメント部メンバーにインタビューしました。

■プロフィール


照屋遼
英国ラッセル・グループの大学を卒業。業務・ITコンサルティング系のスタートアップに従事後、
オンラインゲーム企業や自身のスタートアップでプロダクト開発、新規事業、法人経営を経験。
前職では画像系AI(機械学習)コンサルタントとして活躍し、2019年にリノベる株式会社へ参画。
カスタマーエクスペリエンス本部 プロダクトマネジメント部 部長

柴田征宏
同志社大学大学院を卒業。大手SIerにてシステムエンジニアとして金融系プロジェクトに従事後、
大手ITコンサルファームにてプロジェクトマネージャーを経験。前職では自身で新規事業を
立ち上げ、プロダクト開発、営業活動、法人経営を経験し、2021年にリノベる株式会社に入社。

佐藤沙矢香
京都大学大学院を卒業。大手SIerにて、システムエンジニアにて複数プロジェクトに従事。
その後、データ分析・AIの会社にて、プロジェクトマネージャー、プロダクトオーナーを経験。
2021年にリノベる株式会社へ入社。

森田麻美
新卒でインターネットベンチャーに就職、その後数社でBtoCマッチングアプリやメディアアプリ開発、新規事業開発などに従事。2021年にリノベる株式会社入社。

リノベーションを世の中のスタンダードにするために

リノベるのDXを推進するプロダクトマネジメント部では、「ミッション実現をテクノロジーで加速する」というミッションの元、中古リノベーション特有のさまざまな課題にアプローチするプロダクトを開発しています。リノベる。が開発するプロダクトは、大きく分けて2種類あります。

まず、一つ目は、お客さまが利用するものです。中古物件購入と注文型リノベーションは、理想的な家を作れる反面、中古住宅探しや契約手続き、住宅ローンの借り入れ、設計、建材の選択、工事費見積もりの確認など、専門的で煩雑なプロセスを伴う体験です。その中で生まれる不安や悩み、懸念などをテクノロジーの力で解消し、家づくりの体験価値の最大化を目指しています。
2つめは、デザイナーや施工管理者、施工パートナーおよび社員を含む造り手のためのものです。中古リノベーションは一戸一戸状態も施主の要望も異なるため、新築以上に手間ひまがかかり、古い建物や設計・施工に対する高度な知見が重要になります。テクノロジーの力で人によるばらつきを平準化し、業務の効率や品質を高めることで、住まいの造り手が働きやすく、より輝ける世の中を実現したいという想いがあります。

目指すのは、お客さまと造り手それぞれの課題を解決へ導き、リノベーションを世の中のスタンダートにすること。その先に、サステイナブルな社会の実現があると考えています。

とはいえ、リノベるが何より大切にしているのは、お客さまに寄り添って、1人1人の本当にしたい暮らしを引き出し、言語化し、実現していく “人の力”です。

“照屋:「人の能力を拡張し、成長に貢献する」が私たちのスタンスです。結局、人がやらないと価値にならないことはとても多いので、人が人にしかできないところに集中するために、テクノロジーを使います。”

具体的にはどんなプロダクトがあるのでしょうか。主なものを4つ紹介していもらいました。

お客さまと担当者間のコミュニケーションを円滑にする「リノベる。App」

「リノベる。App」は、お客さまがお申し込み後にスマホにダウンロードして使うアプリケーション。トーク機能、画像やPDFがアップロードできるアルバム、やることリスト、スケジュール登録などの機能などが盛り込まれています。今後、ユーザーとのコミュニケーションをサポートする更なる機能拡張を予定しています。

 

“佐藤:「中古マンション探しとリノベーションのワンストップサービスは、お客さまとのやり取りが多いため、メールやメッセージアプリでやりとりをしていると、何往復もする中で大事な項目が紛れてしまうんです。さらに、カウンセリング、不動産探し、設計・施工と工程ごとにさま々なプロが関わるため、経緯や情報の共有も課題でした。一旦、トーク機能からスタートした「リノベる。App」ですが、お客さまのNPSや現場の声を深堀しながら、今リニューアルに取り組んでいます。”

お客さまと担当者がトーク画面でやりとりするだけでなく、打ち合わせやショールーム見学などの予定をスケジュール登録すれば前日にプッシュ通知で知らせてくれたり、アルバムにはお客さまの好きなインテリアの画像をアップして好みを共有したり、工事中の現場のさま子を報告したり。時系列やタスクごとに情報を整理・共有できることで、お客さまも担当者もストレスが減り、進行がスムーズになります。

今後も、お客さまが「リノベる。App」を使う中で見えてきた新たなニーズを汲み取り、機能を拡充していくことも検討しています。

“森田:リノベーションは大きなお買い物にも関わらず、初めて知ること、考えること、やることが多いため、お客さまの不安やストレスが溜まりやすいです。もちろん担当者が丁寧に説明するのですが、うまく伝わらなかったり、忘れてしまったり、後から疑問がわいてきたり、ということが起こることもあります。そのサポートになる機能として、リノベーションの知識を伝えるコンテンツや、お申し込みから引き渡しまでのステップを見える化できるものを作れたらと思っています。それによって説明内容を平準化し、お客さまだけでなく、担当者の負担も減らすことで、お客様に寄り添い、お客様ご自身がまだ気づいていないニーズを引き出すなど「人だからできる価値を提供すること」に集中してもらう未来を描いています。

お客さまのイメージを見える化する内装仕上げの自動提案サービス「sugata」

2020年1月にローンチされた「sugata」は、お客さまが部屋のイメージやテイストから部材を選ぶことができるオンラインサービスです。お客さまがブラウザから操作し、好みのテイスト・予算に合った部材を選ぶことができます。


「sugata」の開発に着手した背景には、リノベーション特有のこんな課題がありました。

・自分の好きな住まいのデザインが分からない、調べるのが大変
・好みのイメージを設計者に伝えづらい
・自由設計のため完成形が想像できない
・リノベーションの費用感が分かりづらい
・上記が原因でリノベーションが辛い体験になってしまう

そこで、「sugata」のキーにしたのは「テイスト」です。事例写真やテイスト一覧から、お客さまが自身の好きなテイストにたどり着けば、そこに紐づく部材が選択でき、かかる費用まで表示されるようになっています。「リノベるApp」で営業や設計の担当者と共有することも可能です。

2022年6月にはさらに選びやすくバージョンアップ。部材を選択するとCGで部材の組み合わせイメージを表示できるようになりました。

“柴田:いきなり「部材を選んで」と言われるより、イメージがしやすくなったというお声をお客さまからいただいています。また、1年ほど使用しながら効果的な活用方法を、コーディネイターやデザイナーと模索しました。その結果、「sugata」は、設計スタート前、物件購入検討段階から活用されるようになっています。「sugata」では、お客さまのイメージとコストをざっくり見える化することでイメージを持ってもらい、その後の設計打ち合わせで実際の部材を見ながら仕様を決定しています。

また、現在60種類以上あるデザインテイストをグルーピングしてみると、お客さまが選択したものと同じグループ内のテイストは好まれる傾向にあることなどもわかってきたそう。このことは、設計者のデザインテイストの得手不得手を平準化することにもつながりました。また、デザインテイストの人気傾向をデータ化し、トレンドを発信、買取再販事業者からの工事請負の際に提案するなど、BtoBtoCの可能性も見えてきています。

2021年12月7日発表『「リノベる。」リノベーションの人気テイスト年間ランキングを発表!』

リノベーションに特化した、施工管理アプリ

こちらは、施工段階で使用するもので、デザイナーと現場管理者とのコミュニケーションを円滑にするためのプロダクトです。スマホにダウンロードして使うアプリケーションで、チャットや物件情報入力、アルバムなどの機能があります。

このアプリの開発背景には、点在する現場を複数同時に推進するリノベーション工事特有の“確認事項の多さ”がありました。

“柴田:例えば、施工品質を担保するために解体時・中間時・引き渡し前と3回の検査があります。このアプリで、検査時の指摘や是正点などを工務店に画像と一緒に知らせることができるようになりました。アルバムはフォルダで仕分けて管理できるので、検査ごとにフォルダを作って双方から写真を格納することができます。”

また、施工管理者も職人も、複数の物件を掛け持ちしている場合が多いので、例えば「管理組合と約束している事項や工事可能時間」、「駐車スペースがない」など案件特有の物件情報を入力しておくことで、現場に入る前に注意事項を確認することもできます。

古いマンションで必須のアスベスト検査など、リノベ特有の検査の観点を取り入れ、今後もリノベーション業界に特化したアプリとして充実を図りたいと考えています。

“柴田:現状は人によって使い方がバラバラになっているのが課題で、施工管理のあり方が問われている気がします。将来的にはコミュニケーションの文脈みたいなものを傾向分析した上で、情報共有が足りていない部分をアプリ側が判断してアラートを出す、なんてこともできるんじゃないかと思っています。”

改善を進め、ゆくゆくはプロダクトと使い方をセットでナレッジ化していくことも視野に入れています。

不動産の相場観をわかりやすく見える化する「R CORE」

こちらは、物件選びの際に、お客さまのエリア選びの手助けをするプロダクトです。築年数や予算、平米数などの条件を入力すると、条件に合う物件のエリア価格相場が、予算より「高い」「低い」というカラーグラデーションで地図上に表示されます。

リノベーションでは、「総予算=物件価格+リノベーション費用」という、独特の予算設定を行うため、物件選びの際に費用のバランスを取ることが重要になってきます。多くのお客さまと打ち合わせをしてきた経験から、以下のような状況・課題が見えてきたことが、開発のきっかけでした。

・リノベる。のお客さまには希望エリアを柔軟に考えていただける方も多い(理想の暮らしやリノベの実現が重要になるため)
・首都圏全体の中古マンションの相場感を綿密に把握することはベテラン担当者でも難しい
・その結果、検索条件の調整や物件の提案・案内に時間を要してしまう

そんな課題を解消するため、AI活用により、統計データに基づいたエリアごとの価格推定を強みとするパートナー企業とのノウハウ共有により開発されました。「高い」「低い」を色で認識しながら、条件に合うエリアを絞ったり、「エリアを優先する場合は他の条件を見直しましょう」「築年数は柔軟に考えてみましょうか」など、エリアに合わせて条件を変えたり、条件と価格の調整をしていくことができるのです。

照屋:お客さまには様々なニーズがあり、私たちが扱うエリアは幅広いので、担当者各人が必ずしも全てのエリアのエキスパートではないことがあります。このツールを使って、お客さまへの提案のクオリティを高めるイメージです。ビジブルでお客さまにもわかりやすく、また社内では新人の育成やサービスの平準化にも使えます。

使う人のすぐ側でブラッシュアップを繰り返す

4つのプロダクトの開発背景に共通するのは、お客さまや社内で吸い上げる現場の声をいかしていることです。過去に別会社でシステム開発に携わってきたメンバーにとっては、この環境が魅力だと話します。

“柴田:プロダクトは基本的に、使いやすくないと受け入れてもらえないんです。デザイナーも現場管理者も、アプリに入力することがメイン業務ではないので、アプリを使うこと自体が目的ではないですよね。使いやすさを求めるためには、直接使う人に聞きにいくことが一番大事です。そこで思いもよらないフィードバックを得られたりするので、何回も繰り返し、聞きに行きます。

“照屋:リノベるではそれができる環境があるのがいいですね。システム開発だけをしている会社では、アポを取ってクライアントに聞きにいかないといけない。それだけで数日かかることもあるため、スピード感が違います。

前職でも工事現場向けプロダクトを開発していた柴田さんは、現在も、デザイナーや施工担当者に同行して工事の様子を観察することがあるそうです。社内でのヒアリングを通して課題を洗い出し、ブラッシュアップを繰り返しています。

また、リノベるでは、お客さまにNPSアンケートを実施し、そこで得られた声をサービス改善につなげています。それは、ビジョンに掲げる「家づくりの体験価値を最大に‐住宅業界NO.1のNPSスコア‐」を実現するため。リノベーション特有の悩みやストレスを課題と捉え、テクノロジー活用の観点からもアプローチしています。

最後に、リノベる。のプロダクト開発をミッションとして2019年に入社した照屋さんに、今後の展望を聞いてみました。

“照屋:私の入社時と比べ、さらにテクノロジーと業務が連携してきたと感じています。これからも注力するのは、“リノベーション特有の悩みや課題”を埋めること。例えば「リノベる。App」の拡張機能ではお客さまの思いを感じ取って情報提供をしていきたいですし、施工管理アプリでは「リノベーションで気をつけないといけないポイント」を強化していきたいです。

まだまだテクノロジーでのアプローチは始まったばかり。実際に使う人たちのすぐ近くで寄り添いながら、リノべる。のプロダクトは着実に“リノベーション特有”の課題を価値に変える進化を遂げていきそうです。

(文:村崎 恭子)

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