蔵前の文具店「カキモリ」で、書くことをもっと楽しく。

蔵前の文具店「カキモリ」で、書くことをもっと楽しく。

蔵前にあるユニークな文具店『カキモリ』。表紙や中紙を選んで自分だけのオーダーノートやインクをつくれることが話題になり、多くの人に注目されています。インターネットが普及したいま、私たちにとって「自分の手で書く」という行為はちょっと特別なものになりつつあるのかもしれません。今回は「たのしく、書く人。」というコンセプトを持った『カキモリ』が生まれた経緯と蔵前の街について、代表の広瀬琢磨さんにお話をうかがいました。

「書くきっかけ」をつくるお店。

お気に入りの文具で「書く」時間を楽しんでもらいたい

IMG_5127reリサイズ

広瀬琢磨さんプロフィール:群馬県出身。祖父の代から続く文具店に生まれる。外資の医療機器メーカー勤務を経て、2010年に東京・蔵前に文具専門店「カキモリ」をオープン。

――お店をつくったきっかけとコンセプトを教えてください。

広瀬さん(以下省略)「まずコンセプトは『たのしく、書く人。』です。やはり今は文字を書く機会が減ってきていると思いますが、書くことの大事さや楽しみを伝えていきたいと思って。そのきっかけをつくるお店をやっています。きっかけづくりのためにペンもありますし、ノートが作れたり、手紙を書くために手紙をいろいろカスタマイズしたり。最近では隣でインクがオーダーできるようにして、書くきっかけの切り口をいろいろ広げています。」

――書くことに対しての思い入れは昔からお持ちだったのですか。

「そうでもないですね。一般の人と同じくらいの感覚かなと思っています。実家が文房具屋だから文房具にかこまれて育ってはいるんですが、世の中の流れとして書くきっかけは減ってきているし、会社の業務ではうちもかなりIT化してきています。ただ、それとは別の次元で『ペンで紙に書く』ということは大事なことであると感じて、文房具屋としてその価値を提案していきたいなと思いました。」

職人とお客様をつなぐ場所。

PA012667

カキモリ外観。あたたかい明かりが見える店内は、多くの人でにぎわう

――お店をつくるにあたって、蔵前という土地を選んだ理由はありますか。

「オープンした2010年の頃から馬喰町で問屋をリノベーションしたギャラリーができたりという流れがあったのですが、家賃が手頃な浅草のあたりに行こうかなと思って。蔵前はちょっと抜け感があって、調べていくと職人の街であることを知り、職人さんとお客様をつなぐようなことをできるかなと思ってここを選びました。」

懐かしいけど、新しい。

IMG_5139

カラフルな色を取り入れたヘリンボーンの床と壁が印象的な店内。色鉛筆をイメージしているのだそう

――内装もかなりこだわっていらっしゃいますね。

「そうですね。一般的な小売店としては、内装はかなりこだわっているほうだと思います。カキモリをつくるときに設計士とアートディレクターに入ってもらって、私がやりたいと思ったことを形にしました。ここのヘリンボーンは色鉛筆のイメージです。製本をする作業場は、相談したときに『絶対前に出したほうがいい』と言われて、外から見える”蕎麦屋形式”にしています。設計士は蔵前らしいけど蔵前らしくない、下町っぽいけど下町っぽくないイメージと言っていました。色鉛筆も、昔からある懐かしいものだけどちょっと新しいものを生み出すようなイメージが重なって、こういう内装になっています。」

蔵前は新旧まじわる「新しい下町」。

OLYMPUS DIGITAL CAMERA

国際通りに面した”蕎麦屋形式”の作業場で製本をおこなう広瀬さん。お店の前を通る人も「何だろう」と興味を持ってくれるという

――広瀬さんの思う「蔵前らしい」とは何でしょうか。

「下町の生活が根ざしていて、横のつながりがしっかりしている部分。でもそれに凝り固まっていなくて、新しく輪に入ってこようという人たちを受け入れてくれる土壌がある場所なのかなと思っています。昔からの古いものを守りつつも、新しさを取り入れていくような新しい下町だと思います。」

――古いものを守りつつ、新しさを取り入れていく点はまさにカキモリさんのコンセプトにマッチしていますね。蔵前でお店を営む中で、嬉しかったエピソードがあれば教えてください。

「地元の人が最近『蔵前土産』として商品を買ってくれることが増えてきたり、外からお客さんがきたときに「蔵前ってこういう街なんだよ」と、うちのマップを持って街を歩きまわったりしてくれて。街にようやく溶け込んできたんだなと思えて、嬉しいですね。自転車で通ってくれるコアなお客さんや、地元の方も多いです。」

人とのつながりを感じるのが好きなら、蔵前は楽しい。

IMG_5138reリサイズ

店頭で配布している「カキモリのある町」という下町散策マップ。B3判の大型サイズに手描きのイラストが描かれ、見ているだけであちこち行ってみたくなる

――カキモリが地元の方々に愛されている様子がよく伝わってきます。最後に「蔵前が好き」「蔵前をもっと知りたい」という人に向けてひとことお願いします。

「2010年にオープンしてから、新しいお店ができたことで外からのお客様が増え、蔵前に住む人もおそらく増えていると思います。あえて下町に住むのであれば、それを楽しんでほしくて。お店の人とコミュニケーションをとったり、新しい人たちとも昔からいる人とも、人とのつながりを感じられる場所が好きであれば蔵前は楽しいと思います。自分から積極的に話しかけることが大事ですね。肩肘はらず、気軽にきてほしいです。」

「たのしく書く」ことのワクワクと大事さをお店全体で伝えてくれるカキモリ。書くことを通じて暮らしを豊かにすることはもちろん、訪れた人に蔵前という街を楽しんでほしいという想いが伝わってきました。カキモリの隣に設けられたインクスタンドは11/1にリニューアルオープン、季節のイベント用のギフトにぴったりの限定アイテムを販売するなど、通っていく中でまだまだ新しい発見がありそうです。お店の雰囲気、商品へのこだわりなど、文房具好きにはたまらない空間。ぜひ足を運んでみてくださいね。

カキモリ
【住所】東京都台東区蔵前4-20-12
【営業時間】火~金曜 12:00-19:00/土・日・祝日 11:00-19:00
【定休日】月曜(祝日は営業)
【公式サイト】http://www.kakimori.com/

【蔵前4273】人と人とをつなぐ、アートのあるカフェ。

モノづくりの街として注目が集まる蔵前エリア。古きよき下町情緒がのこるこの街には、訪れたあとに「また来たいな」と思わせる不思議な魅力があります。今回は蔵前という土地に集まる「人」のおもしろさを探るべく、クリエイティブな活動を通して人と人とをむすぶ場づくりをおこなうリノベーション…

サンフランシスコ発。【ダンデライオン・チョコレート ファクトリー&カフェ蔵前】の魅力

東京でいま大人気のチョコレート店といえば、サンフランシスコ発祥の『ダンデライオン・チョコレート』。チョコレート界のサードウェーブとも呼ばれ、2016年2月、蔵前に海外1号店がオープンしてから、店内は連日多くの人でにぎわっています。今回は蔵前店のスタッフさんに、その魅力をたっぷ…