マンションの修繕積立金の相場は?築年数・広さによる違いやどこまで上がるかを解説
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マンションの「修繕積立金」について、きちんと理解していますか?修繕積立金は分譲マンションを購入すると支払いが必要となる費用のひとつですが、「その金額はどうやって決まるの?」「どのタイミングで使われるの?」など、わからないことが多いのではないでしょうか。
本記事では、修繕積立金についての基本的な知識や相場、適正な金額の設定方法、そして適切な管理や利用方法について解説します。
目次
マンションの修繕積立金とは?
修繕積立金はマンションや集合住宅の長期的な維持管理に欠かせない費用です。ここでは、修繕積立金の基礎知識について解説します。
修繕積立金の目的と必要性
修繕積立金の目的は、建物を長期的に維持するための資金を計画的に蓄えることです。
マンションは各住戸の所有者(区分所有者)が共同で所有する建物です。建物や設備は住み続けるうちに老朽化するため、定期的なメンテナンスや修繕が必要となります。そのための資金が修繕積立金です。毎月、区分所有者が決まった金額をマンションの管理組合に支払い、管理組合が積み立てていきます。
修繕積立金が使われる代表的な工事として、屋根の修繕や外壁の塗り替え、エレベーターの点検・修理、給排水設備の更新などの大規模修繕工事が挙げられます。これらの修繕には、多額の費用がかかります。修繕積立金をあらかじめ準備しておくことで、突然の出費を避け、必要なタイミングに適正に修繕を行うことができます。
このように、修繕積立金は建物の寿命を延ばし、資産価値を維持し、居住者の生活品質を保つために欠かせないものであるため、計画的な積み立てが必要です。
修繕積立金の徴収方法は主に2つ
修繕積立金の徴収方法には主に「段階増額積立方式」と「均等積立方式」の2つがあります。それぞれの概要、メリット・デメリットを見ていきましょう。
段階増額積立方式
段階増額積立方式は、初期の負担を軽減するために最初は低額で徴収を始め、一定期間ごとに金額を段階的に増やしていく方法です。この方式は新築購入時の月々の支払いを抑えられる点がメリットですが、築年数が経つと負担が増えるため、将来的に住民の負担が重くなる可能性があります。また、初期段階での積立金が不足し、大規模修繕の際に十分な資金が確保できないリスクもあります。
均等積立方式
均等積立方式は初期から月々の修繕積立金を一定額に設定する方法です。この方式は、修繕積立金が一定であるため将来的な負担が安定し、資金不足のリスクを回避できる点が特徴です。ただし、新築購入時から積立金が高額な場合もあるため、初期の費用負担が大きくなる点がデメリットです。
マンションの修繕積立金の相場は?
国土交通省では5年ごとに「マンション総合調査」を行い、ホームページで公表しています。令和5年度マンション総合調査によると、1住戸当たりの修繕積立金の平均は13,054円(駐車場使用料などから充当額を除く場合)※1 となっています。
修繕積立金の相場は、さまざまな要素によって左右されます。主な要素としては、地域ごとの相場や物件の種類、建物の構造、築年数が挙げられます。それぞれについて見ていきましょう。
※1 引用:国土交通省「マンション総合調査」
地域別・物件種類別の相場傾向
たとえば、都心部と地方都市では、地価や建設費の違いから修繕費用にも差が生じます。都心部では物価が高いため、修繕費用や積立金も高額になる傾向があります。一方、地方都市では物価が低めであり、それにともない修繕積立金も抑えられることが多いです。
また、物件の種類も相場に影響します。高層マンションはエレベーターや防火設備など付帯設備が多いため、メンテナンス費用が高く、修繕積立金も高めに設定されがちです。一方、低層マンションは付帯設備が少なく、比較的メンテナンス費用が低いため、修繕積立金も抑えられるケースが一般的です。
建物の構造と築年数による影響
建物の構造や築年数ごとに必要な修繕の種類や頻度が異なるため、それにともなう費用も変動します。たとえば、鉄筋コンクリート造の建物は、木造建物に比べて修繕が必要な頻度が少ないため、修繕積立金が低く設定されることがあります。一方で、築年数が古い建物は修繕のリスクが高いため、修繕積立金が高くなる傾向にあります。
また、新築時に設定された修繕積立金は築年数が経つにつれて見直されることが一般的です。適切な設定を行わないと、将来的に予想外の費用負担が発生するリスクがあるため、管理組合は定期的に修繕積立金の見直しを行い、建物の状態に応じた適正な修繕積立金を確保することが求められます。
マンションの修繕積立金の設定について
この章では、修繕積立金の適切な設定のポイントについて解説します。まずは、長期修繕計画をしっかりと立て、それに基づいて積立金を計画的に設定することが大切です。
長期修繕計画と修繕積立金計画の立案
長期修繕計画とは、分譲マンションの品質を保ち、時間の経過による劣化を防ぐために将来にわたる修繕作業の計画のことです。マンションの管理組合が中心となって作成します。平成20年に国土交通省が発表した「長期修繕計画作成ガイドライン」※2 によると、計画は通常、30年程度の期間を見込んで修繕のタイミングとおおよその費用が算定されます。
※2 参考:国土交通省「長期修繕計画作成ガイドライン」
適正な修繕積立金の算出方法
修繕積立金の算出方法は、まず長期修繕計画を立案し、必要な経費を試算します。その費用を月々、もしくは1年ごとの積立金として均等に分割し、国土交通省のガイドラインなどを参考にしながら、修繕積立金の金額が決まります。
たとえば、外壁塗装や防水工事などの大規模修繕工事を10~20年単位で計画するとします。50戸規模のマンションの場合、外壁塗装や屋上防水、共用部分の修繕には、1回あたり数千万円以上の費用がかかることが一般的です。この場合、1戸あたりの月々の修繕積立金は、5,000円から15,000円程度が目安となります。ただし、高層マンションや東京都心部などでは設備の充実度や物価により、さらに高額となるケースもあります。
ちなみに、マンションの大規模修繕工事の周期については特にルールは決まっていませんが、一般的には12年と言われています。平成20年に国土交通省が公開した「長期修繕計画作成ガイドライン」※2 に「12年~」との記述が多いため、参考とされることが多いです。
※2 参考:国土交通省「長期修繕計画作成ガイドライン」
修繕積立金が不足した場合
修繕積立金が不足してしまうと、建物のメンテナンスや修繕工事に必要な資金が確保できないため、計画的な修繕が困難になります。その結果、建物の劣化が進み、資産価値の低下や居住環境の悪化につながる可能性があります。
まず、修繕積立金が不足している場合には、管理組合での議論を通じて住民の合意を得て積立金の増額を検討する必要があります。増額の決定には、具体的な計画内容やその必要性を丁寧に説明し、住民の理解を深めることが重要です。
また、不足分を補うために金融機関からのローンを考慮することもひとつの方法です。この場合、返済計画を明確にし、負担がどの程度かかるかを住民に周知することが求められます。
修繕積立金の適正評価
修繕積立金の適正評価も欠かせません。先述したように、適正な修繕積立金を見積もるためには、建物の規模や築年数、使用する建材の耐久性などを考慮し、専門家の意見を取り入れることが必要です。
長期修繕計画をもとに、将来的に必要となる修繕費用を予測し、それに応じた積立金額を設定することが大切です。積立金が過剰でも不足でもない適正な額を確保することで、住民の負担を最小限に抑えつつ建物の品質と住環境を維持することができます。
適切な修繕積立金の管理と活用
適切な修繕積立金の管理と活用は、建物の長寿命化と資産価値を維持するために大切です。修繕計画を立て、予算を適切に管理することで、大規模修繕や緊急修繕時に困ることなく対応できます。それぞれのポイントについて解説していきます。
修繕積立金の管理
管理組合や理事会は、建物の維持管理において中心的な役割を担います。定期的な点検やメンテナンスを欠かさず、住民の意見を集約し、適切な修繕計画を提案・実施していくことが大切です。このような取り組みを通じて、住民全体で充実した住環境を維持することが可能となります。
修繕積立金の使用については、管理組合の総会で合意を得てから利用することが原則です。これにより、透明性が確保され、使用用途も明確にすることができます。緊急時には臨機応変な対応が必要ですが、あらかじめ修繕積立金の使い道を管理規約に明記しておくことで、スムーズな資金の利用が可能となります。
緊急修繕のための積立金利用
緊急修繕とは、予期せぬ事態に迅速に対応しなければならないケースを指し、たとえば大規模な水漏れや地震などの自然災害による被害が発生した場合などが挙げられます。
修繕積立金を計画的に積み立てていれば、緊急修繕への迅速な対応が可能となります。必要十分な備えがあれば、迅速かつ適切な修繕が可能となり、住民の安全と安心を確保することができます。
まとめ
今回の記事では、マンションの修繕積立金の目的や相場、管理や活用のされ方など、知っておくべき基礎知識を解説しました。修繕積立金はマンションで長く安全に暮らすうえで必要不可欠な費用であり、マンションの資産価値にも影響してきます。
これからマンション購入を検討されている方は、物件探しの際に「修繕積立金」に関する情報をしっかり確認することをおすすめします。修繕積立金が適正な金額なのか、長期修繕計画はあるのか、管理組合の運営状況や修繕積立金の総額などもチェック項目に加えてみてください。
いえらぶ編集部
全国15,000社の不動産会社の業務支援をする中で得たノウハウを日々発信中。
おもに、不動産(賃貸・購入・売却)や税金・法令といった暮らしに関わる記事を執筆しています。
https://ielove-cloud.jp/
筆者
リノベる。JOURNAL編集部
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