長期優良住宅とは?メリット・デメリットと認定基準を解説
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「長期優良住宅」とは何か、認定基準とあわせてメリット&デメリットをご紹介します。また、リフォームやリノベーションで長期優良住宅にすることは可能なのか解説します。
長期優良住宅とは
住宅の購入を考えている方は、「長期優良住宅」という言葉を耳にしたことがあるかもしれません。
長期優良住宅とは、長期にわたって良好な状態で使用できる構造や設備を備えた住宅のこと。国土交通省は平成21年(2009年)より、構造や設備など一定の基準を満たす住宅を長期優良住宅と認定する制度を開始。長い期間、安心して快適に暮らせる家の普及を進めているのです。
制度が始まってから平成30年度末(2018年度末)までの約10年間で、認定を受けた住宅は累計100万戸以上。新築の戸建て住宅のおよそ1/4が、長期優良住宅に認定されています。
長期優良住宅の認定基準は?
長期優良住宅として認定されるためには、構造上や設備面で設けられた基準をクリアする必要があります。具体的には、次のような項目があります。
劣化対策
劣化対策としては、経年劣化に耐え数世代にわたって居住できる構造であることが求められます。劣化対策等級(構造躯体等)が等級3であり、かつ構造の種類ごとに下記の基準を満たさなければなりません。- 木造:床下空間の有効高さの確保、床下・小屋裏の点検口の設置など
- 鉄骨造:柱、梁、筋かいに使用している鋼材の厚さ区分に応じた防錆措置 または 木造と同じ基準
- 鉄筋コンクリート造:水セメント比を減らすか、かぶり厚さを増すこと
耐震性
地震大国と呼ばれる日本では、長く安全に暮らせる家には高い耐震性が欠かせません。具体的には、下記のいずれかを満たす必要があります。
- 耐震等級(倒壊等防止)が等級2
- 耐震等級(倒壊等防止)が等級1、かつ、安全限界時の層間変形を1/100(木造の場合は1/40)以下
- 品確法に定める免震建築物
維持管理
住宅の構造躯体(建築構造を支える骨組み部分)に比べて、各種設備の耐用年数は短い場合がほとんどです。長期優良住宅では、そのような設備について、維持管理を容易にする措置が取られていることが求められます。具体的には下記のような条件をクリアしなければなりません。
- 維持管理対策等級(専用配管)が等級
- 維持管理対策等級(共用配管)が等級3 ※共用住宅の場合
- 更新対策(共用排水管)が等級3 ※共用住宅の場合
更新の容易性
上記の維持管理の項目と同様に、各種設備の更新が容易にできる措置が講じられていることが必要です。具体的な基準は、維持管理と同様です。配管や内装、住宅設備などのメンテナンス、点検、修理がしやすいことが求められます。
可変性
可変性とは、住宅の間取りが変更可能かどうかという項目です。私たちは年齢に応じて、結婚、出産、子育て、子供の独立など、家族構成やライフスタイルが変化していきます。その変化に合わせて間取りを変更できれば、快適に長期間同じ家で暮らし続けられることになります。
長期優良住宅の可変性の基準としては、「躯体天井高さが2,650㎜以上」と定められています。この可変性の項目は、戸建て住宅は対象外で、共同住宅と長屋が対象となります。
バリアフリー性
高齢になると、わずかな段差の移動が困難になったり、車椅子での生活になったりすることが考えられます。そのため長い期間同じ家で生活をするためには、バリアフリー対応であることが重要です。
現在はバリアフリーではない場合でも、共用住宅では将来のバリアフリー改修に対応できることがポイントとなります。そのために必要なスペースが共用廊下などに確保されているかが、長期優良住宅の基準となります。具体的な基準は、「高齢者等配慮対策等級(共用部分)等級3」。このバリアフリー性の項目は、戸建て住宅は対象外となります。
省エネルギー性
気候変動が世界規模の問題となる中、省エネルギー住宅の需要は今後ますます高まっていくでしょう。そのため長期優良住宅では、断熱性能など省エネルギー対策が行われていることが必要。「断熱等性能等級 等級4」をクリアすることが求められます。
住居環境
住宅環境の項目は、良好な景観を作り、地域の居住環境の維持や向上に配慮していることが審査されます。地区計画、景観計画、条例によるまちなみ等の計画、建築協定、景観協定などが定められた区域の場合は、これらの内容と調和を図る必要があります。申請先の所轄行政庁が確認をすることとなります。長期優良住宅には、住宅だけでなく周辺環境も含めた暮らしやすさが求められます。
住戸面積
長期にわたり快適かつ安全に生活するためには、一定の面積が必要であることから、住戸面積が定められています。戸建て住宅は75㎡以上で、1つのフロアの床面積が40㎡以上であることが必要です。共同住宅は55㎡以上が必要になります。
維持保全計画
維持保全計画の項目は、住宅を建築した時から、将来を見据えて定期的な点検や補修等の計画が策定されていることが求められます。住宅の構造耐力上主要な部分や、雨水の侵入を防止する部分、給水や排水のための設備などが該当します。
長期優良住宅のメリット
長期優良住宅の認定を受けるためには、多くの基準が設けられていることが分かりました。これらの基準をクリアして認定されると、多くのメリットが受けられます。
所得税(住宅ローン減税)
住宅ローン控除とは、住宅ローンを利用して住宅を購入したりリフォームを行ったりした場合の、負担軽減を目的とした税制優遇制度です。「住宅ローンの残高×1.0%」が10年間、控除されます。10年間で控除される所得税と住民税の合計額は、一般住宅では400万円に対して、長期優良住宅なら500万円となります。
また、一般住宅では控除対象となる住宅ローンの限度額は4,000万円、長期優良住宅では5,000万円となります。つまり、住宅ローンを4,000万円以上利用して長期優良住宅を購入した場合は、節税効果が大きくなります。この優遇措置は2021年12月31日までに入居した場合に適用されます。
所得税(投資型減税)
「標準的な性能強化費用相当額(上限650万円)の10%」を、その年の所得税額から控除できます。ただし上記の住宅ローン減税と、この不動産取得税の優遇の併用はできませんのでご注意ください。またこの優遇措置は、2021年12月31日までに入居した場合に適用されます。
不動産取得税
不動産取得税は、土地や住宅を購入したときに自治体に納付する税金です。購入する住宅が一定の要件を満たす場合、軽減措置が受けられます。1997年4月1日以降に建てられた一般住宅の控除額は1200万円で、長期優良住宅では1300万円に控除額が増額されます。
登録免許税
住宅を購入したとき、その土地や建物を購入した人の所有権を、法務局の登記簿に登記する手続きが必要です。このときにかかるのが、登録免許税です。登録免許税の金額は不動産評価額に、決められた税率をかけて計算します。しかし、長期優良住宅なら下記のように税率が引き下げられ、登録免許税が安くなるのです。この優遇措置は、2022年3月31日までに入居した場合に適用されます。
・保存登記の場合
一般住宅:評価額×0.15%
長期優良住宅:評価額×0.1%
・移転登記の場合
一般住宅:戸建て・共同住宅 評価額×0.3%
長期優良住宅:戸建て 評価額×0.2%、共同住宅 評価額×0.1%
固定資産税
不動産を所有していると、固定資産税を支払わなければなりません。長期優良住宅では、この固定資産税が1/2に減額される期間が、一般住宅より長くなります。固定資産税の減税措置は2022年3月31日までに入居した場合に適用されます。
<減税措置適用期間>
・戸建て
一般住宅:1~3年
長期優良住宅:1~5年
・共同住宅
一般住宅:1~5年
長期優良住宅:1~7年
長期優良住宅のデメリット
長期優良住宅には多くの優遇措置があり、たくさんのメリットを受けられることがわかりました。ではデメリットについてはどうでしょうか?
申請の手続きに手間・コストがかかる
長期優良住宅の認定を受けるためには、新築住居の場合は着工前に居住地の行政庁に申請を行わなければなりません。申請の手続きの流れは、次の通りです。
- 技術的審査の依頼
申請者または建築主が登録住宅性能評価機関に、技術審査の依頼をします。登録住宅性能評価機関とは、国土交通大臣の登録を受けた、住宅性能評価を行う機関のこと。長期優良住宅建築等の計画について、技術的審査を行います。 - 適合証の交付
1の審査をクリアすると、登録住宅性能評価機関から適合証が交付されます。 - 所轄行政庁へ認定の申請
次に、申請者または建築主が2の適合証と必要書類を合わせて、所轄行政庁に長期優良住宅の申請を行います。 - 認定・着工
所轄行政庁が適合審査を行い認定されれば、認定通知書が交付され、その後着工します。 - 工事完了
工事が完了して、晴れて長期優良住宅が完成します。
これらの申請の手続きには、手間と費用がかかります。それぞれのケースによってかかる期間は異なりますが、一連の審査期間は数週間程度かかると言われています。また申請手数料は行政庁ごとに異なりますが、すべて合わせて10万円以内です。長期優良住宅の申請のサポートを行ってくれるサービスがありますが、その場合はサポート代金がさらにかかることとなります。
建てる費用が高くなる
長期優良住宅には、耐震基準や省エネ基準が設けられており、断熱材を使用するなどさまざまなアップグレードが必要となります。そのため家の品質は高くなる一方で、建築資材の使用でコストアップとなることは避けられません。長く快適に暮らせるクオリティの高い住宅になりますが、建築費用が多くかかりやすいことを覚えておく必要があるでしょう。
点検コストがかかる
長期優良住宅は一度認定されて工事が終われば、それで完了ではありません。工事終了後も、点検は10年以内の頻度で行う必要があります。それらのメンテナンスの記録を残しておき、所轄行政庁から調査があった際に、きちんと報告することが求められるのです。このような点検コストがかかることと、さらに点検の記録を残しておく手間が発生することが、デメリットとして考えられます。
リフォーム・リノベーションで長期優良住宅にすることは可能?
長期優良住宅認定制度は、新築住宅に限った話ではありません。既存住宅に耐震補強やバリアフリー化などのリフォーム・リノベーションを行って、長期優良住宅の基準を満たせば、認定を受けることが可能です。その場合、上述の税金面での優遇措置は下記のように変わります。
・所得税(住宅ローン減税) ※2021年12月31日までに入居した場合
限度額は250万円(控除率2.0%)
最大控除額は5年間で62.5万円
・所得税(投資型減税) ※2021年12月31日までに入居した場合
耐震+省エネ+耐久性の場合:限度額500万円、最大控除額50万円
耐震または省エネ+耐久性の場合:限度額250万円、最大控除額25万円
新築住宅の場合と同じように、申請の時間や手間がかかることも覚えておきましょう。
まとめ
長い間快適に暮らせる長期優良住宅は、申請にかかる手間や費用、建築コストを考えてもメリットは多いでしょう。しかし、一般住宅でも長期優良住宅と同じくらい質の良い住宅もあります。「将来は地方でのんびり暮らしたい」などと将来設計を立てている方なら、無理に長期優良住宅を建てる必要はないかもしれません。長期優良住宅のメリットとデメリットをよく考えて、長期優良住宅と一般住宅のどちらにするべきか検討してはいかがでしょうか。
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