バリアフリーリフォームの工事内容と費用相場は?注意点、補助金制度も紹介
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高齢者の家族と同居しているなどの理由で、バリアフリーリフォームを考えることもあるでしょう。そのような場合、費用がかかるのか、気になる人もいらっしゃるかと思います。そこで今回は、住まいをリフォームでバリアフリーにしたいと考えている方に向けて、工事内容や費用相場、工事の際の注意点などをご紹介します。
※最下部にある「費用情報に関するご注意事項」をお読みください。
目次
バリアフリーリフォームで行われる代表的な工事とポイント
バリアフリーリフォームの代表的な工事内容には以下のようなものがあります。
手すりを設置する
手すりの設置は、代表的な工事のひとつです。高齢になると階段の上り下りが辛くなり、平坦な場所であっても移動が困難になる場合が多いです。そのため、手すりの設置は、身体を支え、転倒を防ぐことに役立ちます。
取り付けるときには、対象者が使いやすい太さの手すりを選び、使いやすい高さに設置することがポイントです。そのような点を考慮せずに取り付けると、車椅子を使ったときに高さが合わない、太くて握りにくいなど、使いにくくなる可能性があるため注意しましょう。
段差を解消する
足腰が弱り動きが不自由になったときや、車椅子を利用する場合には、ほんのわずかな段差が障壁になってつまずいたり、転倒の原因となったりすることがあります。このような場合は、段差を解消することで、転倒による骨折や怪我などを防ぎやすくなります。段差解消のためのリフォームは、段差がある場所や高さに応じて適切な方法を選ぶことがポイントです。
ホームセンターなどで購入できる簡易的なスロープを段差がある場所の高さに合わせて設置するだけでも効果があります。ただし、踏み込む際にずれると危険なので、滑らないよう取り付けることが大切です。細かな段差については、床の底上げを検討するとよいでしょう。
滑りにくい床にする
高齢による筋力の衰えや病気などにより足元がおぼつかなくなると、段差がない平らなところでも転倒しやすくなります。そのため滑りにくい床材に変更するのも、バリアフリーリフォームの代表的な工事です。床をリフォームするときには、場所に応じた素材を選ぶことが重要です。
たとえば水回りであれば水はけのよい素材を、寝室には転倒しても怪我を軽減しやすい柔らかなコルク素材を、といったように場所に合った素材を選びましょう。好みの色調のものを選べば、内装の雰囲気を壊すこともありません。
車椅子で使いやすくする
高齢になったり、病気や怪我をしたりして、車椅子で生活することを想定しておくことも大切です。車椅子を前提としたリフォームは、段差の解消と引き戸への変更が有効です。車椅子での移動では、玄関の上がりかまちのような大きな段差はもちろん、普段は気にならないようなちょっとした段差が障壁となるため、スロープを取り付けます。
開き戸は車椅子での開閉が難しく、出入りがしづらいため、引き戸に変更しておくとよいでしょう。ただし床にレールをつけるタイプだと、段差ができてしまい不便が生じます。引き戸にするときには、上吊り式のノンレールタイプにするのがおすすめです。
【場所別】バリアフリーリフォームの内容と費用相場
バリアフリーリフォームは、場所に応じて適切な工事をおこなう必要があります。ここでは、場所ごとに主におこなわれる工事の内容と費用相場を紹介します。なお、リフォーム費用は、エリアや工事の範囲、リノベーション前の状態、施工業者などにより異なりますので、あくまで目安として参考にしてください。
浴室
浴室内での事故を防ぐためのバリアフリーリフォームの主な工事の内容と費用の目安は以下のとおりです。
【工事の内容と費用の目安】
- 入口の段差の解消:5万円〜10万円
- 折り戸・引き戸への変更:12万円〜19万円
- 滑りにくい床材への変更:10万円〜20万円
- 手すりの設置:2万円〜3万円
浴室では、脱衣所側に水が流れ込むのを防ぐために段差が設けられているのが一般的です。しかし、段差があるとつまずきやすいうえ、水に濡れていることにより滑って転倒する恐れがあるため解消しておきましょう。あわせて浴室の扉を外開きの折り戸、もしくは引き戸にしておくと、万一、浴室内で転倒しても外から扉を開けて救出することができます。
また、水濡れなどにより滑りやすくなる床を、水はけがよく滑りにくい床材に変更しておくと安心です。あわせて手すりも取り付けて、移動時に身体を支えられるようにしておくとよいでしょう。
トイレ
トイレは使用時に、立つ、座る、体を反転させるなどと多くの動作を要します。使用頻度も高いことから、高齢者や体が不自由な方が使いやすいようにリフォームすることが大切です。トイレにおける主なバリアフリーリフォームの種類と費用の目安は、以下のとおりです。
【工事の内容と費用の目安】
- 手すりの設置:1万円〜5万円(壁の補強を要する場合は5万円〜10万円)
- 引き戸への変更:5万円〜15万円
- 和式トイレから洋式トイレへの変更:20万円〜50万円
- トイレスペースの拡張:15万円〜30万円
トイレにおいても、開き戸は不便で転倒の恐れがあるため、扉は引き戸にしましょう。引き戸であれば、車椅子でも楽に出入りできるようになります。あわせてトイレ内での複雑な動作を補助できるように、手すりを設置しておきます。
しゃがんで使う和式トイレは、足腰が弱る高齢者には負担が大きいため、洋式トイレに変更します。スペースを確保できるのであれば、車椅子での利用や介助者が一緒に入ることを想定し、スペースを拡張するリフォームもあわせて検討しましょう。
廊下
廊下は各居室やトイレ、浴室、洗面所間での「移動」が想定された場所であることを踏まえ、以下のようなバリアフリーリフォームを検討します。
【工事の内容と費用の目安】
- 手すりの設置:本体価格3,000円〜2万円/m+施工費1万円〜3万円
- 段差の解消:2万円〜15万円
- 廊下の幅拡張:30万円〜150万円
手すりの設置で壁の補強を要する場合は追加費用がかかります。
車椅子での利用を想定し、廊下の幅を拡張する際は、国土交通省の「高齢者が居住する住宅の設計に係る指針」の推奨幅である850mm以上にしましょう。あわせて移動中の体を支える手すりの取り付けもおこないます。
各居室との段差については、床をかさ上げする以外にも、市販のスロープを設置するなどDIYで簡易的に解消することも可能です。簡易的なスロープは、幅や素材にもより異なりますが、通信販売で2,000円〜1万円程度で入手できます。
玄関
段差が多い玄関では、以下のようなバリアフリーリフォームを検討します。
【工事の内容と費用の目安】
- 手すりの設置:壁付き手すり設置:1.5万円〜2万円/床付き手すり設置:3万円〜6万円
- 上がりかまちの段差解消:5,000円〜2万円(踏み台設置)
- ドアを引き戸に改修:30万円〜50万円
- 玄関スロープの設置:15万円〜20万円
玄関には、エントランスから玄関ポーチ、そして上がりかまちと複数の段差があるのが一般的です。玄関ポーチまでの段差は玄関スロープを、上がりかまちには踏み台を設置します。玄関ドアが開き戸の場合は、車椅子での出入りを想定して引き戸への改修を検討しましょう。玄関ドアの引き戸への改修は、既存のドアとドア枠を解体・撤去して新しいドアを取り付ける「はつり工法」で実施します。
寝室
寝室は日中はもちろん、夜間照明を落としたなかで移動することも想定し、リフォーム内容を検討します。具体的な工事内容と費用の目安は、以下のとおりです。
【工事の内容と費用の目安】
- 手すりの設置:1.5万円〜2万円
- コンセントの増設:0.5万円〜2万円
コンセントの増設は、移設先が遠い場合や配線が長くなる場合は3万円前後かかることがあります。寝室ではベッドから立ち上がったり、トイレへ移動したりする際に体を支える手すりの設置をおこないます。出入口やベッドの横、ベッドまでの動線など、普段の動きを想定して手すりの位置を決めましょう。
高齢になるとトイレが近くなり、夜間でもトイレに行く頻度が高くなります。暗い中の移動は危険なので、ベッドサイドや足元に照明を設置できるよう、コンセントの増設をおこないましょう。人感センサー式の照明なら、暗い中スイッチを探す必要がないのでおすすめです。
バリアフリーリフォームをおこなう際の注意点
バリアフリーリフォームをおこなうときには、対象者の身体の状況にあわせて工事内容を考えることが大切です。たとえば脚力が衰えているなら手すりの設置、視力が衰えているなら足元の照明など、その人に必要なリフォームは何かを検討します。手すりひとつにしても、ただ取り付ければよいわけではありません。対象者の身長や、身体能力の特性にあわせる必要があります。
また、バリアフリーのリフォームは、高齢者だけでなく、同居する家族にとっても暮らしやすいかという視点で考えることも重要です。たとえば、今早急にバリアフリーのリフォームが必要なわけではなく、将来に備えたいと考えている場合には、工事の内容を限定したほうがよいこともあります。
たとえば子供が小さいうちに大人用の手すりを取り付けてしまうと、子供の頭の高さに手すりが設置されるため、怪我につながる恐れがあります。すぐに必要ではない場合には、リフォームに際してはいったん下地材の設置のみにとどめておくなど、状況に応じて工事の範囲や内容を検討することが大切です。
バリアフリーリフォームで活用できる補助金制度
国や自治体が提供しているさまざまな補助金制度のなかには、バリアフリーリフォームで利用できるものもあります。補助金制度を活用することで、コストを抑えたバリアフリーリフォームの実現が可能です。ここではバリアフリーリフォームで活用できる制度を紹介します。
介護保険
家庭内の要支援者・要介護者を対象にバリアフリーリフォームをおこなうときには、一定の条件を満たすことで介護保険を活用できます。介護保険の対象となるのは、以下のようなリフォームです。
- 手すりの取り付け
- 段差の解消
- 滑りの防止や移動の円滑化などのために床や通路面の材料を変更
- 引き戸といった扉への取り替え
- 洋式便器といった便器への取り替え
- 上記5つの住宅改修とあわせて必要となる住宅改修
介護保険が適用されると、支給限度額20万円の9割である18万円を上限として、リフォームにかかった費用が償還されます。利用を検討する場合は、ケアマネジャーに相談しましょう。なお介護保険を活用してバリアフリーリフォームを実施するには、リフォームが必要な理由を添えて事前申請します。やむを得ない事情を除き、事後申請は認められない点には注意しましょう。
自治体の補助金事業
バリアフリーリフォームに関しては、各自治体が高齢者や障がい者向け工事を対象に、補助金制度を設けている場合もあります。たとえば東京都江東区では、介護認定はされていないものの、要支援・要介護状態となる恐れがある高齢者に対する予防給付をおこなっています。手すりの取り付けや段差解消、床材の変更などが助成の対象です。(※2022年6月時点)
各自治体でどのような補助事業を展開しているかは、お住まいの自治体に問い合わせると確認できます。 住宅リフォーム推進協議会の検索システムでも調べられるのでチェックしてみましょう。
長期優良住宅化リフォーム推進事業
長期優良住宅化リフォーム推進事業は、国土交通省による住宅の性能向上に対するリフォーム工事への補助金制度です。手すりの設置や床段差の解消などのバリアフリーリフォームも、補助対象とされています。
【補助率】
3分の1
【補助限度額】
- 長期優良住宅(増改築)の認定を取得しないものの、一定の性能の向上が認められる場合:100万円/戸(150万円/戸)
- 長期優良住宅(増改築)認定を取得した場合:200万円/戸(250万円/戸)
※()内の金額は以下の場合に適用されます。
・三世代同居に対応する改修工事を実施する場合
・若者・子育て世帯
・中古住宅の購入者が改修工事を実施する場合
・一次エネルギー消費量を基準比−20%(再エネを除く)とする場合
長期優良住宅化リフォーム推進事業は、既存の戸建て住宅、共同住宅いずれも対象となります。なお補助金を受けるには、リフォーム工事前にインスペクション(専門家による住宅診断)を実施すること、工事後に一定の性能基準を満たすことなど、さまざまな条件があります。制度の利用を検討する際には、補助事業者として登録しているリフォーム業者に相談しましょう。
まとめ
バリアフリーリフォームは、対象となる場所に応じて適切な内容の工事をおこなう必要があります。その際には、対象者の状況にあわせたリフォーム内容を検討することが大切です。また、バリアフリーが目的の工事は補助金制度を活用できるケースもありますので、あわせて確認するようにしましょう
費用情報に関するご注意事項
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尚、記事内の費用相場は、小規模な工務店や職人による施工費用も含んでいます。
会社や工事の規模やサービス内容により費用は大きく異なりますので、ご了承下さい。
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