築45年・35㎡(平米)の中古マンションを「自分に合わせて」つくる。登山と庭のデザインの仕事を楽しむ、ひとり暮らしのワンルームリノベーション
35㎡(平米)、1LDKから生まれ変わったワンルームの住まいです。お施主さまは造園関係の仕事でデザインや庭の管理を担い、休日は登山や岩を登るクライミングを楽しんでいます。3年前、購入時点ですでに部分的にリノベーションされていた中古マンションを、仕事道具と登山用品がすっきり収まる住まいへとさらにつくり込みました。今回は、既存の設備を活かしながら暮らしに合わせて造作したポイントをご紹介します。
仕事道具と登山用品をまとめてしまえる、広めの土間玄関
玄関はもともと靴箱だけの小さなスペースでした。土間を約3倍に広げ、仕事道具と登山用品を収納できる場所につくり変えています。仕事柄、匂いの出る薬剤や工具があり、部屋と分けたいという思いが理由だといいます。
壁には有効ボードを設置し、帽子やヘルメット、カバンをかけています。もともと靴箱だった収納は、扉を外してオープンに使っています。登山靴を収める棚もあえて扉のないオープン仕様にしました。閉じた収納だと靴にカビが生えたりソールが傷んだりするため、風通しを優先しています。洗濯機置き場だった場所に生まれたデッドスペースには、丈の長いコートをかけられる場所を造作しました。登山用のリュックもすっぽり収まっています。
既存キッチンを活かしながら、収納と造作テーブルをプラス
キッチンは購入時についていたものをそのまま再利用。上部の換気扇だけをコンパクトなタイプに交換し、既存の収納扉を外して新たに造作の棚を追加しました。キッチンの位置も変えていません。食洗機もそのまま備えています。
背面には洗濯機・冷蔵庫・電子レンジと収納をまとめ、パントリーのように使っています。冷蔵庫と洗濯機のサイズが収まりきらないという失敗はよくあると考え、事前にサイズを計算して造作したといいます。棚は高さや位置を変えられるタイプにしつつ、何を収めるかも見込んで配置しています。

キッチン横には、キッチンと同じ高さの造作カウンターテーブルを設け、一段下げた作業テーブルも続けてつくりました。パソコンの仕事をする場所と、食事をする場所を使い分けているそうです。

ベッドもソファもいらない。小上がりで叶えたワンルームの動線
リビング兼寝室には小上がりを造作しています。
ワンルームの空間に立ち上がりの動きをつくりたいこと、収納を確保したいこと、ベッドを買わずに済むようにしたいこと。この3つを考え、最初から小上がりの設置を希望していたそうです。小上がりはベッドよりひと回り大きく、来客時は板を出してテーブルにし、周りに座ってもらう使い方もしているといいます。
小上がりの下は、タオル類をしまう浅めの収納と、テントや寝袋など登山用品を収める奥行きのある収納に分かれています。マットレスの下にも大きな収納があり、蓋を開けて出し入れします。
天井の懸垂バーで、クライミングのトレーニングも自宅で
天井には懸垂用のハンドルを取り付けています。趣味の登山、なかでも本格的なクライミングのトレーニングのために設置しました。
賃貸では難しい造作ですが、購入した住まいだからこそ叶えられています。かわいらしい色のバーを見つけて取り付けたそうです。懸垂だけでなく、体を伸ばしたり腹筋をしたりと幅広く使っているといいます。インテリアとしても部屋になじんでいるそうです。
海外事例からデザインした、コンクリート躯体現しのアクセントウォール
リビングの壁は、もとからあったコンクリート躯体をそのまま活かしたアクセントウォールです。オリジナルのデザインで壁をつくりたいという要望に対し、リノベる。からコンクリート躯体を活かす提案を受けたといいます。
色がはっきりと出て、立体感も生まれるという理由からこの仕様に決めたそうです。デザインは、日々見ている海外の事例を参考にスケッチし、相談しながら形にしました。玄関にも同じ柄のデザインを取り入れ、住まい全体に統一感を持たせています。壁の下部にはポストカードを、強力な粘着テープで直接貼り付けています。
登山用品にもぴったり合う、フルオーダーのクローゼット
壁の裏側はクローゼットになっています。持っている服や道具のサイズを測り、図面を出してつくった完全造作の収納です。
どのようなものが入るか分からない部分は、有効ボードにすることで後から物に合わせられるようにしました。
計算し尽くした収納だからこそ、これ以上は服や道具を増やさないと決めているそうです。
「不安」を承知で決めた、自分に合わせてつくり込む住まいづくり
購入時、市場にはすでにリノベーション済みの物件が多く並んでいました。その中で、使える設備は活かしながら、こだわりたい部分だけをさらにリノベーションできる物件を選んだといいます。年齢を重ねたことに加え、登山という趣味が始まり、既存の間取りには収まりきらないライフスタイルが固まってきたことが、購入とリノベーションを決めた理由だといいます。物件選びでは、駅からの近さよりも、自転車で移動しやすい大通り沿いであることや、勤務先へのアクセスを重視したそうです。築年数はあまり気にせず、古い物件でも掘り出し物があればよいという考え方だったそうです。一方で、マンションの管理状態は重視していたといいます。理事会の積立金がしっかりしているかをリノベる。から助言を受け、住民の数が少なくコンパクトなマンションを選んだそうです。「私に合わせて作ったので、私に合ってます。思った通りにできて、暮らせています」とお施主さまはいいます。
自分に合わせてつくり込むからこそ、ものを増やさずに暮らせる
3年間暮らしてみて、造作をしすぎて困ったことはないといいます。物が増えたと感じたタイミングで、その都度整理していく考え方だそうです。キッチンが広くなったことで、パン作りなど新しい料理にも挑戦できるようになり、食事にまつわる時間も充実したといいます。登山用品もこの住まいに来てから増え、できることが広がっているそうです。既存の設備を賢く活かしながら、暮らし方に合わせて空間をつくり込んだ住まいです。ものを持ちすぎずに暮らすという、中古マンションリノベーションならではの選択肢がここにあります。


















