築27年・65㎡(平米)の中古マンションを、2LDK+WICへとリノベーションしたご夫婦の住まいです。おふたりの出会いはロンドンで、当時通っていたレストランの内装が住まいづくりのベースになっています。65㎡という面積のなかで開放感を実現した工夫や、暮らし始めてからの発見を、空間ごとにご紹介します。
収納力抜群の土間で、趣味道具もきちんと収める
玄関に入って最初に目を引くのが、幅約2mの大きな収納です。
棚板は高さを変えられるタイプを採用。靴の量に応じて棚を増やしたり、幅を調整したりできます。収納の下部は空間を開けてあり、スーツケースを収納。もともと旅行好きな家族で、出張や旅行で使う機会も多いといいます。

玄関左手の奥には、奥行きのある土間スペースを造作。幅は約75cmと控えめですが、ベビーカーを置くために意図してつくったスペースだそうです。将来はワークスペースや子どもの道具置き場として使う想定だといいます。

ロンドンのレストランを重ねた、廊下洗面
廊下を進むと、リビング手前に洗面スペースがあります。

天板はキッチンと色を合わせ、丸みのあるフォルムと琥珀色の雰囲気は、行きつけだったレストランの化粧室をイメージしたといいます。見た目は造作風ですが、既製品に色付きシートを貼って仕上げたもの。つなぎ目がなく、汚れが目立ちにくいのも利点だそうです。
収納は引き出しとニッチのみ。日常使うものだけを最低限出す工夫を重ねています。
廊下からリビングへの入り口には、ガラス製の親子ドアを採用。予算の都合で悩んだものの、廊下の照明をリビングから見せたいという思いで奮発したといいます。ガラスに入った線は、洗面のインダストリアルな雰囲気に合わせたデザインです。

15畳を実際以上に広く感じさせる、LDKの工夫
扉を抜けた先はLDK。広さは約15畳です。

ロンドンで暮らしていた頃の広々としたリビングが忘れられず、運動もできるくらいの空間を求めたといいます。
広く感じさせる仕掛けは3つ。1つ目は角部屋を生かし、2面に窓を配置したこと。2つ目は先述のガラスドアで、廊下の奥行きまで視線を届かせていること。3つ目は目線より低い位置にインテリアを集めたことです。

床は廊下と同じ塩ビタイルのグレーで統一し、壁は一面だけ白にすることで、明るさと重さのバランスを取っています。キッチン奥の壁は躯体現しに裸電球を組み合わせ、ロンドンのレストランのラフな雰囲気を再現したそうです。

生活感を隠しながら魅せる、グラフテクトのキッチン
キッチンは「家具のようなキッチン」を掲げるグラフテクトを採用。シンクが手前、IHコンロを背面の壁付けにしたセパレートタイプで、カウンター側は作業や食事にも使えます。

石のような質感の黒いキッチンで、生活感を出さずに存在感を持たせたいという要望からデザイナーに相談し、選んだといいます。

収納量を確保するため2セットを連結し、幅は約3mに。パントリーは設けず、収納はすべてキッチン内に集約しています。シンク下は空間を開け、ゴミ箱を目立たせずに収納できるようにしたそうです。側面のニッチは、ワイングラス収納の相談から生まれたアイデアだといいます。家電は黒で統一し、キッチン全体の一体感を出しています。
自分たちらしい暮らしを叶えたリノベーションの選択
以前は夫婦2人で40㎡ほどの賃貸に暮らしていましたが、壁紙一つ変えられないことにストレスを感じていたといいます。「空間を自分たちの好きなようにできる」という理由から、リノベーションを選んだそうです。
夫婦そろって週末はカフェを巡るのが習慣で、家でもコーヒーを楽しめるようにエスプレッソマシンを導入したそうです。家の中で過ごす時間そのものを大切にした住まいづくりが、随所に表れています。
動線を分けて叶えた、水回りのゆとり
洗面を廊下側に出し、脱衣スペースとお手洗いを分けたのは、朝の身支度が重なる時間帯の混雑を避けるためだといいます。

脱衣スペースには洗濯機と収納棚を配置。床材はここだけ木目調のフローリングにして、水回りの雰囲気を切り替えています。お手洗いには手洗い場を設けていないため、出てすぐ使えるよう洗面台を隣接させました。
子どもの自立を叶えるこども部屋
水回りの向かいには約4畳の子ども部屋。室内窓から採光と通風を確保しています。壁は水色のアクセントで、男の子らしすぎない可愛らしさを添えたそうです。
「早いうちから自分の部屋を持たせたい」という夫婦の考えから、当初から個室として設計したといいます。

扉のない開放感と、遊び心のワンカラーを添えたWIC
WICには扉を設けていません。開けたときの開放感と、中で仕事をする際の息苦しさを避けるための選択だといいます。空調対策として、後からカーテンを追加しました。
壁は一面だけオレンジがかったピンクに。ロンドンのレストランで見た彩り豊かな壁を思い出し、遊び心として取り入れたそうです。


L字の収納は夫婦ふたりの衣類を収納。以前の家で収納が足りなかった経験から、ハンガーパイプを長めに確保しています。一角には夫さんのワークデスクを設置。子どもがいる中でも集中できる場所として活用しているといいます。
暗さと木目にこだわった、眠るための特別な寝室
寝室は約5畳。ルーフバルコニーに面した窓があり、実際の広さ以上のゆとりを感じます。

「暗く落ち着いた雰囲気にしたい」というのが一番の希望だったといいます。壁の色はリビングと同じですが、遮光性のあるバーチカルブラインドと琥珀色の照明を合わせることで、まったく異なる印象に仕上げています。
天井は木目調の壁紙です。外壁側で断熱材が入る関係で躯体現しにすると段差が出るため、天井を造作。朝の光が木目に映える柔らかさを選んだそうです。
暮らしの変化
ロンドンで暮らした記憶と、家族で過ごすこれからの時間。そのどちらも大切にしながら、65㎡という限られた面積を最大限に生かした住まいです。「空間を自分たちの好きなようにできる」というお施主さまの言葉どおり、素材選びから収納の使い方まで、暮らし方に寄り添った工夫が詰まっています。中古マンションでも、間取りと発想次第でここまで自由な住まいがつくれることを教えてくれる一例です。