名作家具から始まる住まいづくり。58㎡(平米)・築38年の中古マンションリノベーションで叶えた、ノイズのないワンルームのひとり暮らし
面積:58㎡
間取り:2LDK→ワンルーム
建物:マンション
完工時築年数:築38年
家族構成:ひとり暮らし
東京都内、築38年・58㎡(平米)ほどの中古マンションを、ひとり暮らし向けにフルリノベーションした住まいです。 もとは2LDKだった間取りを、ほぼワンルームへと変えました。 「家具をジュエリーに見立てて展示する」というコンセプトのもと、名作家具とカーペット、隠したキッチンでノイズのない空間をつくり上げています。 この記事では、そのこだわりの詰まった住まいをご紹介します。
思い出を飾る「アートギャラリー」のような玄関
玄関には靴を収納するシューズクローゼットを造作したそうです。洋服の数が多いため、別でクローゼットを設けています。掃除機や布団など、見せたくないものもここにしまえるようにしたといいます。
玄関の取っ手には、実家の建具に付いていたものを使用。「思い出深いものとすごいきれいなもの」とお施主さま。せっかくの機会だったので、外して家から持ってきてもらったそうです。
アートも飾っています。有名な作品というよりは、思い出深いものだけを集めたそうです。昔よく見ていた映画やアニメのポスター、実家からもらったプレゼント、札幌の実家に帰ったときに買う工芸品など。旅先で「よくわからないもの」を集めるのが、お施主さまの習慣になっているといいます。玄関を入ってすぐ、小さなアートギャラリーが広がる住まいです。
ジュエリーを飾る「箱」に見立てた、洗練されたリビング
リビングの扉は、スチールの枠にポリカーボネートをはめ込んだオリジナルの建具です。海外の建築で使われているのを見て「かなりかっこいい」と感じ、設計士と相談して採用したといいます。天井までつながる高さがあり、向こう側もうっすらと透けて見えるつくり。視覚的な広がりをつくるポイントになっています。
リビングづくりのきっかけは、あるジュエリーブランドの展示会だったそうです。コンクリート打ちっぱなしの空間に、グレーのカーペットを敷き、アクセサリーだけをぽんと展示するブース。「本当に箱を作ったみたいな」空間に強く惹かれたとお施主さまは振り返ります。そこから、箱のような部屋をつくり、家具をジュエリーに見立てて展示するというコンセプトが生まれたといいます。
伸びやかな空間を実現するための物件探し
もとは2LDKだった間取りを、壁をほぼすべて抜いてワンルームにしたそうです。リビングからベッドまでひとつながりで、20帖に届かないくらいの広さです。
お施主さまの出身は札幌。広い部屋に住み慣れていたため、東京に出てきて借りた賃貸の狭さに驚いたといいます。のびのびとした空間が当たり前だったため、自分の住まいもそういう空間にしたいと考えたそうです。予算の兼ね合いもあり、壁をぶち抜いて広くする方向を選んでいます。
物件選びでは、水まわりが一箇所にまとまっている物件を選んだといいます。水まわりが集まっているほうが、ワンルームとしてつくりやすいためだそうです。また、縦長の部屋より正方形に近い部屋のほうが、大きくぶち抜く際の制約が少ないと考えたといいます。この2点を軸に、間取りや窓の配置を見ながら物件を探したそうです。
フローリングをやめて選んだ「カーペット」の暮らし
床材には、多くの住まいで主流のフローリングではなく、カーペットを採用。参考にしたジュエリーショップがカーペットを使っており、フローリングよりモダンな雰囲気にひかれたためだといいます。フローリングは木目という個性が出て、インテリアとのバランスをとるのが難しくなるそうです。家具をジュエリーのように引き立てたいという思いから、カーペットを選んだといいます。
カーペットにしてよかった点は、デッドスペースがほとんどないこと。友人をたくさん招いて椅子が足りなくなっても、床に座ってもらえるそうです。「クッションが入っていて柔らかいし、肌触りもいい」とお施主さま。寝転んだりストレッチをしたりと、床の上でも快適に過ごせているといいます。フローリングだと地べたに座っているような感覚になりますが、カーペットならそうした気兼ねがないそうです。
名作家具をジュエリーのように魅せる、インテリアと照明
部屋づくりの起点になったのは、フリッツ・ハンセンの円テーブルだといいます。
物件を購入する2〜3年前はヴィンテージブームで、ヴィンテージのテーブルもいくつか見ていたそうです。改めて家具を探すなかで、この円テーブルに心を引かれたといいます。「ヴィンテージのようなウッドな感じよりも、洗練されたモダンなものが好きなんだと気づいた」とお施主さま。この一脚を起点に、合わせるソファやサイドボードを選んでいったそうです。
ペンダントライトはFlos(フロス)のもの。シルバーの質感がテーブルとよく合います。ワイヤーで吊るされ、浮いているように見える佇まいが特徴です。「ちょっとフューチャーな感じが気に入っています」とお施主さま。
ダイニングチェアは、木のソープ仕上げが主流のなか、あえてパールグレーに塗装したそうです。シルバーや白でまとめた部屋に映える色を選んだ結果だといいます。
ソファはリーグ・ロゼの「トーゴ」。人とかぶらなそうな色を選び、シルバーを基調にした部屋の中でニュートラルな色がバランスを取っているといいます。ローソファのため、床に座ったときにカーペットのよさを存分に楽しめるそうです。
最後に決めたのは、Tecta(テクタ)のローテーブル。低さと、シルバー・白のボックス、カーブを描く脚のバランスが気に入り選んだといいます。「この部屋を最後に締める、いいピースになった」とお施主さまは話します。
部屋全体はシルバーを差し色にまとめたそうです。黒でまとめる方が簡単だと感じたため、あえてシルバーで遊びを効かせ、自分らしさを出したといいます。
天井の照明はLe Klint(レクリント)のシーリングライトです。折り紙のような形が特徴のブランドで、ペンダントの代わりにシーリングを選び、部屋を広く見せているそうです。夜になると、まるで月が光っているような柔らかな光り方をするといいます。梁にも間接照明を仕込み、来客時にはしっかりと部屋を照らせるようにしたそうです。天井につける照明は最低限にとどめ、ノイズの少ない空間を意識したといいます。
シェルフはUSM Hallerのモジュール式家具。色はシルバーを選び、思い出の品やアートを飾る棚として使っているそうです。まだ余白があり、これからも少しずつ増えていく予定だといいます。
リビング上部の壁にはガラスブロックを採用。視覚的な奥行きを出すとともに、光が反射してきらりと光る美しさに惹かれた選択だといいます。真っさらな壁よりもアクセントになる、部屋の主役のひとつです。
生活感を「隠す」ノイズのない暮らし
リビングにはテレビを置いていません。あまり見ないため、置くとかえって目立ってしまうと考えたそうです。
「なくていいものは、極力このリビングから削っていきたい」とお施主さま。壁だけはプロジェクターを投影できるよう、あえて何もつけずに残しているといいます。くつろぐときはソファや寝室の小さなソファに座り、本を読んだりメッセージを返したりして過ごすそうです。テレビがないことで、リラックスして家で過ごせるようになったといいます。
コンパクトでも困らない、ひとり暮らし仕様のキッチン
キッチンも、リビングからは見えない場所に。
見えてしまうと生活感が出て、つくりたいギャラリーのようなイメージから離れてしまうと考えたためだそうです。アイランドキッチンなど流行りのスタイルはあえて選ばず、キッチンを完全に個室として仕切ったといいます。
キッチン設備には、サンワカンパニーのコンパクトな2口コンロを採用したそうです。ひとり暮らしで細かい調理器具もあまり持っていないため、「最低限できればいい」という考えだといいます。それでも友人が遊びに来たときに作業できるスペースは確保できているそうです。
キッチン横のスペースは、ワークスペース兼食事スペースとして使っているそうです。在宅で過ごす日は、こことキッチンの水まわりを行き来するだけで十分だといいます。リビングの円テーブルは、友人が来たときの食事用として活躍しているそうです。
床材はリビングのカーペットとは変え、塩ビタイルに。
水を使う機会が多く、食事もとる場所のため、掃除のしやすさを優先した選択だといいます。「カーペットのメンテナンス性も、実は意外とよかった」とお施主さま。それでも、仕事の場として空間を分けるために床材を切り替えたそうです。
表情を変える寝室と、メリハリをつけた水まわり・バルコニー
ワンルームの中でも、寝室はゆるやかにゾーニング。
ギャラリーのようなリビングとは対照的に、寝室は子供部屋のような雰囲気にしたそうです。ピンク・黄色・紫・緑と、色をたくさん散りばめた空間だといいます。「自分の部屋だからこそ、自由にできる」と、あえてテイストを切り替えたそうです。家具の多くはIKEAで揃え、ピンクの棚はMontana(モンタナ)のもの。子供部屋のなかでいちばん華やかな、アートや小物を飾るスペースになっているといいます。
リビングと寝室の仕切りは完全な壁ではなく、上半分にポリカーボネートを使用。寝たときの窮屈さを避けつつ、リビングから見たときの広がりも保つためだそうです。ライトを当てると光が透け、間接照明のようにも使えるといいます。
水まわりは玄関側の一箇所にまとめ、コンパクトかつ生活感の出ない場所にしたそうです。造作は最低限にとどめ、洗面台だけのシンプルなつくり。浴槽は設けず、シャワールームのみにしたといいます。近くに銭湯があり、それでも生活できると判断したためだそうです。水まわりの予算を抑えるかわりに、リビングや寝室により多くのスペースと予算を割いたといいます。
インナーバルコニーの床には、カーペットではなくタイルを採用。植物をしまうときにカーペットが濡れてしまうことを考えた選択だといいます。
「気持ちも満足したい」から始まった、リノベる。とのものづくり
リノベーションのきっかけはSNSの広告だったといいます。以前の住まいは、寝泊まりするだけの場所で、特に気に入っていたわけではなかったそうです。同じ金額を家賃で払うのはもったいないと感じ、好きなものにお金をかけられて資産にもなるリノベーションを選んだといいます。
新築マンションも、以前の住まいと同じく、自分の好きなものがあるわけではないと考えたそうです。自分でリノベーションし、好きなものをつくって住むことで、気持ちの面でも満足したいと考えているといいます。
住まいのデザインには自分なりの好みがありましたが、物件探しはひとりでは難しいと感じたそうです。物件探しからデザインまでワンストップで頼めることが、リノベる。を選んだ理由だといいます。「自分ひとりでは、これだけの件数を集めたり、更新に敏感でいたりするのは難しい」とお施主さま。今回の住まいも、掲載から1週間足らずでなくなってしまうほど人気の物件だったといいます。出たばかりの情報を紹介してもらい、決めることができたそうです。
インテリアサービスも利用したといいます。家具は店頭で見るだけでは、部屋に置いたときのボリューム感がつかみにくいもの。サイズ感や配置、動線について専門家に相談し、大きすぎないかといった点でアドバイスをもらったそうです。色やブランドの選定は、お施主さま自身のこだわりで決めています。
「好きなもの」に囲まれて、休日の過ごし方も変わった住まい
以前は、休日に家にいることをもったいないと感じていたそうです。今は、この住まいで過ごすことが休日の選択肢のひとつになっているといいます。住まいづくりを通して、インテリアや作家を探すという新しい趣味もできたそうです。ワークスペースを設けたことで、絵を描くなど新しい趣味も始めやすくなったといいます。興味のなかったインテリアショップやカフェを巡ることも、刺激になっているそうです。
家は建てて終わりではなく、これからも変わっていくものだとお施主さまは考えています。好きな家具をジュエリーのように見立て、ノイズのない空間で暮らす。中古マンションのリノベーションだからこそ叶えられた、住まいづくりのかたちです。





















